第15話015「人生やっぱ心の余裕は大事だなって」



——教室 HR前


 俺が教室に入ると、さっきまでのクラスメートの喧騒が静まった。


 おっと〜⋯⋯夏休み明け登校初日でいきなりこの反応ですか? ひどくない? 軽く泣きそう⋯⋯というのは冗談で、この反応は2年に進級して佐川たちに目をつけられいじめられたあたりからずっと続いている。


 むしろ、平常運転。いや〜懐かしい。


 そんな5年ぶりの皆の平常運転を見て懐かしんでいると、


「お、タケル! よく来たな〜」

「⋯⋯」


 早速、真打ち登場である。


「事故に遭ったんだって? そりゃ災難だったな〜」


 声をかけてきた『佐川 卓さがわ すぐる』がニヤニヤしながらそんな心にもないことを行って近づいてきた。


「おー大変だったなータケルぅ〜! でも、学校に来てるってことは特に大したケガはしてないだろ? なら、今日も俺たちと一緒に格闘術の特訓⋯⋯しないとだな(ニチャァ)」

「それこそ事故に遭っても負けない強い体を作らないとだぜ〜、タケルく〜ん?(ニチャァ)」

「ひゃはははは! いいか、タケルぅ〜? これはお前のためなんだぜぇ〜?(ニチャァ)」

「⋯⋯」


 取り巻きビッグ3は今日も健在で、笑顔がしっかり『ニチャァ顔』で草である。まったく、涙が出るほど懐かしいぜ。


 さて、これまでの俺なら察して・・・こいつらの言う通りに特訓と称した『サンドバッグ公開処刑』に晒されるのが常だが、


「いや別にいいよ。そういうのは」


 はっきりと否定した。


「は? 何否定してんの? お前に拒否権なんかねーんだ⋯⋯よ!」


 そう言って、取り巻きの一人がいきなり俺の足を踏んづけようとしてきた⋯⋯ので、


 スッ⋯⋯。


 ガン!


「痛ぇ! て、てめえっ?!」


 俺は取り巻きのスローモーション・・・・・・・・の踏みつけをしっかりとける。


「何、よけんてんだ、てめぇ!」

「生意気だぞ、コラぁ!」

「なめてんのか!」


 すると、いつものように取り巻きがキャンキャン吠えてうるさかったので、


「⋯⋯うるさい」


 と、俺はほんのすこ〜し、本当に軽〜く、『スキル:威圧・・』を発動。すると、


「「「ひぃぃっ?!」」」


 そんな軽い『威圧』程度で取り巻きビッグ3が完全にビビって萎縮した。


 え? 嘘だろ? この程度、ゴブリンでもビビらんぞ?


「っ!? て、てめえ、今を何やった⋯⋯っ!!」


 すると、佐川が俺と同じように威圧してくる⋯⋯がだいぶショボい。


「誰がショボいだ、コラァ!」


 あ、心の声漏れてた(笑)。


「え? 何のこと? 僕シラナ〜イ(棒)」

「て、てめえぇぇ!」


 ざわざわ⋯⋯。


 すると、俺と佐川と取り巻きのやり取りを見ていた周囲がざわつき始めた。しかし、そのタイミングで、


「おい、お前ら何やってる! 席につけ!」


 ちょうど先生が入ってきた。


 ちなみに、この『先生』は5年前、生徒指導室で俺に「佐川たちに取り入ろうとするお前が悪い」などと勘違いな説教を垂れてきた奴である。ていうか、俺的にはむしろ先生こいつこそ、佐川たちに取り入ろうとしているんじゃないのかさえ感じる。


 もちろん、こいつも俺の『ざまぁ』対象だ。


 とりあえず先生が来たことでこの場は収まったが、佐川と取り巻きたちは席に着いた後もずっと俺のことを睨みつけていた。


 フッフッフ⋯⋯落ち着けよ、お前ら。


 俺のざまぁはまだ始まったばかりだぜ?



********************



——放課後


「おう、ちょっとツラ貸せや」


 ガシッ!


 佐川がそう言うと、俺の背後から取り巻きが逃げられないよう腕を掴む。一応振り払うこともできたが当然そんなことはしない。


 だって、それは俺の望みでもあったからさ〜。



——体育倉庫裏


 ここは普段ほとんど人が通らないことで有名な一角。俺は2年になっていつも佐川たちにここに連れてこられてはずっとリンチを受け続けていた⋯⋯そんな懐かしい場所だ。


 そういや、夏休みに入る前の一学期最終日——俺はここでこいつらに3時間近くもリンチされたな〜。しかも、顔はバレるからと執拗に服で隠れる部分だけを何度も殴られた(昭和のドラマかよ!)。おかげで、その日から1週間体中が痛すぎて寝るのがしんどかったのは言うまでもない。


 そんなことをふと懐かしんていると、


 ガン!


 いきなり佐川が俺の胸ぐらを掴み壁に押し付けた。


 え? 壁ドン? 全然嬉しくねー。


「お前、何か調子乗っているようだが何のつもりだ、あ?」


 佐川がそう言って俺に凄んでくる。


 今までの⋯⋯異世界に行く前の俺ならそこですぐに謝っただろう。


 しかし、これからの俺・・・・・・はそうじゃないからな?


「えっと⋯⋯一応確認だけど、この時間ならまだ人とか来るんじゃない?」

「心配いらねーよ。一人見張らせているからな」

「⋯⋯なるほど」


 ちゃんと見張りをつけているようだ。用意がいいね。


「ということは、ここには絶対に・・・人は来ないと?」

「おう、大声出しても問題ないぞ?」

「へっへっへ。泣いても喚いても問題ナッシングだぜ〜」

「おう、どんどん泣いていいぞ〜。ギャハハハ!」


 と、佐川と取り巻き2人が嬉しそうに説明してくれた。


「そうなんだ。なら⋯⋯⋯⋯楽しませてもらおうかな(ルン)」


 ガシッ!


 そう言って、俺は胸ぐらを掴む佐川の右手首を掴むと、そのまま、


 グシャ⋯⋯!


 握り潰した。


「え? が、がぁぁぁあぁぁあぁぁあぁぁぁ〜〜!!!!!!」


 佐川が俺の握力で潰れてプラ〜ンと情けなく垂れ下がった『さっきまで手首だったもの』を見てもすぐに痛みには反応しなかった。しかし、現実に目の前で起きたことを認識すると絶叫を上げた。


 そんな光景を眺める取り巻き二人もまた、佐川と同じように目の前の光景に理解が追いついていないのか呆然と立ちすくんでいた。うんうん、無理もないね。


 なので、俺は軽〜く蹴りを二人にお見舞いする。すると、取り巻き二人の足が曲がってはならない方向に曲がる。すると、二人は佐川と違ってすぐに痛みに反応。


「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜!!!! お、俺の、俺の、足がぁぁぁぁ!!!!」

「ぐがぁぁぁあぁぁぁあぁあああぁああ〜〜〜!!!!!」


 二人はただただ痛みに悶絶。しかも、取り巻き二人は悲鳴だけでなく、何と『お漏らし』まで盛大にやらかした。


「うんうん、そうだよね〜。いきなり足折られたら漏らすよね〜。大丈夫、別にお漏らししたからって恥ずかしがらなくていいから。みんな通る道だから!」


 俺はそう言って二人にそんなお漏らし程度は当たり前だよと励ましてあげる。おかげで二人とも泣いて喜んでいるようだ。イイコトシタナ〜(棒)。


「お〜い、どうしたんだ、お前ら? さっきすごい叫び声が聞こえたんだけど⋯⋯。いきなり、やりすぎたんじゃないだろう⋯⋯⋯⋯っ!?」

「おー取り巻き3号君!」


 3人の絶叫を聞いてからか見張りをしている取り巻きの残り一人がノコノコ・・・・やってきた。


「はい、はい、ようこそ〜。ささ、どうぞ、こちらへ!」


 そんなノコノコ間抜けヅラしてやってきた取り巻きの残党を接待する。


「な、何だ、これ⋯⋯っ!? ひ、ひでぇぇ⋯⋯」


 見張りの男は佐川と取り巻き二人の惨状に絶句する。


「こ、これ、まさか、お前がやって⋯⋯」

「当たり前じゃん?」


 俺は食い気味に答えると同時にそいつの懐に入り右腕を取ると、


 ボキ⋯⋯リ⋯⋯!


 肘の可動域の逆方向・・・にしっかりと折ってあげた。


「ひぃ?! ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 ニッコリ。


 俺はそいつの痛む顔を見て思わず微笑む。


 諸君、ざまぁは始まったばかりだぞ!

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