第7話007「探索者養成講座」



「きれいな人だったな〜。たしか折笠洋子さんって言ったっけ⋯⋯」


 俺は階段登り2階に辿り着くと、講座会場へ続く長い廊下を駆け足で進みながらさっき話をした美人受付嬢折笠さんのことを思い出していた。


「それにしても、只者じゃなかったよな〜」


 ギルドの、しかも探索者シーカー養成ギルドの受付嬢にしては、かなりの品格オーラを醸し出していたが⋯⋯。


「いや、きっとあまりに美人だから緊張したせいだな。それにしても、あんなきれいな人が養成ギルドの受付嬢だなんて⋯⋯。たしか養成ギルドはあくまで探索者シーカー養成用のギルドだから、正規の探索者シーカーギルドと違ってもっと簡易的な感じだから、受付の人もてっきりバイトの⋯⋯素人みたいな人がやっていると思ってたのに⋯⋯」


 そう、異世界にもここの探索者シーカーギルドに似た『冒険者ギルド』というものがあったが、さっきの折笠さんの洗練された対応の『質』を見ると、明らかに異世界の冒険者ギルドの受付嬢とは雲泥の差だった。


「すごいな、探索者シーカーギルドって⋯⋯。ここまで徹底しているんだな。異世界あっちのギルドとは大違いだ」


 さっきのことを考えて感心していると、ちょうど講座会場に着いた。


「ここからが⋯⋯俺の探索者シーカーとしての第一歩⋯⋯だな!」


 俺はいきおいよく、扉を開けた。



********************



「これより、探索者シーカー養成講座を始める」


 講師担当の男性スタッフの言葉で探索者シーカー養成講座がヌルッと始まった。


 講座は、前半は20年前に出現したダンジョンの話から、人体に新しい能力が目覚めた話、日本がエネルギー大国になった話などネットを開けば出てくる内容程度の話だった。


 後半は探索者シーカーになったらどうなるかなど、この養成講座でしか聞けない話をするということで後半が開始した。



「まずは探索者シーカーは一般人に比べて高い身体能力やスキルという特殊能力を持っている。なので、探索者シーカーになった者がダンジョン探索を辞めて一般社会で仕事をすることになった場合、能力を使用することは基本認められているが、もしその力を使って法を犯した場合、一般人よりもかなり厳しい刑罰が用意されている」


 なるほど。ま、そりゃそうだろうな。


 探索者シーカーの力は一般人のかなり上をいくんだ。当然だろう。


「例え、窃盗や詐欺といった人に危害を加えない犯罪であっても、それらはすべて実刑となるし罰も一般人に比べて厳しい罰となる。ちなみに執行猶予なんてものは無いぞ? あと当然だが、強姦や殺人などの犯罪はほとんど死刑になるからな?」


 会場がざわっとする。


 その内容は「そりゃそうだよね」という納得組と「そんなの公平じゃない!」という反発組だ。


 いや、これ聞いて反発する奴ってやばくね?


 今、反発した奴らにはできるだけ近づかないでおこう。



「まーそれくらい探索者シーカーの力はダンジョン外では脅威になるということだ。君たちも探索者シーカーになることができたらダンジョン外での力の使用には気をつけるように」


 と、この話を締め括ったあと、講師が何やらニヤけ顔になった。


「さて、ここからは、晴れてレベル2に上がって探索者シーカーになれたら得られる『メリット・・・・』についての話をしていこうか(ニヤリ)」


 講師の言葉を聞いて受講者のほとんどがニヤけ顔となる。もちろん俺もそうだ。なんせ、探索者シーカーになれればガチで一攫千金も夢じゃないからね。


「それにしてもこの講師、話の持っていき方うまいよな〜」と思いながら、俺は講師の話を聞き漏らすまいとしっかりと耳を傾ける。



********************



探索者シーカーになると、まず登録証が発行される。そして、これが、レベル2となり探索者シーカーと認められた証。最初に貰う『F級探索者シーカー』の登録証だ」


 ジャラ⋯⋯。


 講師が各階級の登録証であろうものを机に出した。


「これがF級の登録証だ。材質は『鉄』。ダンジョンに入る時は必ずこの登録証を持って入るように。無いとダンジョンには入れないからな? あと、無くすと再発行に3万円ほどかかるからちゃんと保管しておけ」


 高っ?! 絶対に無くさないようにしないとだな。


「ちなみに、F級は『鉄』、E級は『銅』⋯⋯と階級が上がることに登録証の『材質』も変わっていく。まーこの辺はテレビやネットとかで知っていると思うから話省くぞ〜」


 そう。探索者シーカーの登録証の材質については、講師の言う通り探索者シーカーを目指す者にとっては当然の知識だった。


 補足しておくと、カードの材質は『F級=鉄(鉄色)』『E級=銅(銅色)』『D級=銀(銀色)』『C級=ゴールド(金色)』『B級=ダイヤモンド(透明色)』『A級=ヒヒイロカネ(濃赤色)』『S級=オリハルコン(黒色)』『Trsトランセンデンス=アダマンタイト(虹色)』となっている。


 登録証はB級までは地球に現存する鉱物で作られており、A級以上からはダンジョンでしか取れない鉱物で作られているらしい。


「へ〜、ダンジョンにはヒヒイロカネもオリハルコンもあるのか」


 俺のいた異世界あっちでもそのファンタジー御用達鉱物はあった。ということは、恐らく、硬度はもちろん、魔力を通したりなど、ファンタジー御用達鉱物は地球の鉱物よりも質も性能も価値も上なんだろう。


「『A級以上は別格』⋯⋯っていう扱いなわけね」


 いいね。それでこそ、やる気が出るってもんだ!


 ちなみに、探索者シーカーの階級の頂点は『Trsトランセンデンス』と『級』がつかない。『階級から外れた存在』という意味らしく『称号』という扱いらしい。



 そして現在、この世界で『Trsトランセンデンス』の称号を持つ探索者シーカーはいない。

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