対峙12



「良い天気ねー、風が気持ちいいわ」


「晴れて良かったですね」


只今15時40分─。

清々しい青空の下、わたしの地元に向けて移動中である。午前中は曇り空だったが、午後になって太陽が顔を出した。


「おい、なんで窓開けてるんだ。暑いだろう」


「空気の入れ替えよ。自然の風が気持ちいいじゃない」


「生ぬるい風がこっちに来る」


「アンタ、暑いのほんとダメよね」


「基本的に夏は無くていいと思ってるからな」


「えー、わたしは夏好きだけどな」


「あたしもよ。寒いよりいいわよねえ」


「何がだ?汗はかくし、良い事ないだろう」


「メッチャ寒いよりは、メッチャ暑いほうがいいです」


「寒ければ着込めばいいだろう。暑いのはどうにも出来ん。熱中症で死ぬ人間もいるくらいだからな」


「まあ、確かに」


「だから性格も冬なのよ、アンタは」


「どーゆう意味だ」


「暗いってこと」


噴き出しそうになるのを堪えた。


「ほっとけ」


今日の早坂さんは、ゆったりとした黒のTシャツに同じく黒のパンツ、白いスニーカーだ。

瀬野さんは白い半袖シャツに濃色のジーパン。

わたしはいつも通り、黒いTシャツに黒いパンツ、白いスニーカー。そう、まさかの早坂さんとかぶった。着ている物は早坂さんのほうが何倍も高そうだけど。


迎えに来た車に乗った瞬間、お前らバカップルみたいだぞと瀬野さんに言われ気まずかったが、早坂さんはお礼を言っていた。



心地良い車の揺れと流れる外の風景を見ていると、無性に睡魔が襲ってくる。

そう、これはこの状況がそうさせているだけで、決して昨日の寝不足が原因ではない。


「遊里、もう少しスピード出せないのか?」


「無理よ、下道なんだから。順調に来てるか急ぐ必要ないわよ」


「しかし、走るにつれて田舎になっていくな」


2人が何か言ってる・・・でも、わからない。

ああ、きっといつもの漫才だ・・・。





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