その男、財前 龍慈郎20
──彼女の話が本当なら、この川に妖怪がいるということか。
早坂さん達に連絡するべきか・・・。でも、確信もないのに?
「どうせ、信じてないでしょ」
「え?いや、信じますよ」
元々大きい彼女の目が、更に大きくなった。「・・・嘘だ」
「いえ、本当に。あなたの言う事が本当なら、ここには妖怪がいるのかと」
わたしの言い方がまずかったのか、彼女は口を開けたまま固まった。「・・・今、なんて言いました?」
「妖怪。それより、それ、なんですか?」気になっていた物を指さす。
「えっ、あ・・・これは・・・」
「見ても?」
彼女の表情を、イエスと受け取った。バッグの中身を手ですくう。
この感触は──「塩?」
「・・・そうです」
「なんで、これを川に?」
「・・・霊には、塩が効くって聞いたから」
「あー・・・」なるほど。そこに行き着いたか。
「ていうか、妖怪・・・?って、なんのことですか?」
今度は、わたしの番だ。「信じますか?妖怪」至って真面目に聞いた。
「・・・霊じゃなくて・・・妖怪?」
「わたしは、霊とかはよくわかりません。ただ、妖怪は見えます。人間に危害を加える妖怪が、この世にはいるんです」
全て受け売りですけどね!心の中で自分に突っ込む。
彼女は、明らかに混乱していた。そして、たぶん信じていない。そりゃそうだ、霊云々の話ならまだしも、妖怪なんて言葉が出てきたら、漫画やアニメの世界しか想像出来ない。それも、見ず知らずの女から聞かされるんだから。
「霊とは、違うんですか・・・?」
予想よりは良い反応だっが、あいにく、その質問に答えられる知識は持ち合わせていない。
「ちが・・・う?と、思います。霊は、死んだ人間が成仏出来なかったりとか、そういう話だと思うけど、妖怪は・・・動物だったり、こう、いろんな姿のがいて・・・」
自分の語彙力に、涙が出そうだ。
「じゃあ、母さんを襲ったのは、妖怪・・・」
「おそらく。ちなみに、妖怪には塩は効かなと思います」それも、断言は出来ない。
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