思索10


電話を終えて2度寝の姿勢に入り、あっ、と思い出した。着信履歴を確認する。

1番上に春香の名前があり、その下に不在を示す赤い文字で、「オネエ・・・・・・えっ!」

思わず飛び起きた。

最初の電話は、あの人だったのか。そういえば、昨日メールが来てたんだ。起きたら返そうと思って、すっかり忘れていた。


しばらく、考えた。電話が来たから、電話で返すべきか──。でも、なぜか気が重い。

あの夜の事は、出来るだけ考えないようにしていた。"この類"の事は、脳が勝手にそうなってしまうんだ。


とりあえず、メールの画面を開く。おはようございま──と打ちかけて、削除する。

こんにちは。すみません、昨日は飲んでいてメールに気づきませんでした。今日起きたら返そうと思ってたんですが、今まで寝てい──メールの画面を終了し、勢いに任せて電話をかけた。


コールが1回、2回 ──「もしもし雪音ちゃん?」


「あ、もしもし」声が小さくなる。


「良かった、無事だったのね!」


「・・・無事?ですか?」


「メールも返ってこないし、寝てるのかなと思って待ってたんだけど一向に連絡来ないから、もしかしたら食べられちゃったのかもって心配してたのよ」


「食べられる・・・えっ、わたしが!?」


「そうよ、あんな事があったばかりだし、嫌な方にばっか考えちゃったわ」


あんな事を思い出して、少し身震いする。


「だから言っただろう、考えすぎだって」電話の先から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「瀬野さんですか?」


「え?ああ、そうよ。うるさいわね!聞こえてるじゃない!」微かだが、いらっしゃいませという声が聞こえた。お店にいるんだろうか。「でも良かった、安心したわ。ところで雪音ちゃん、今って何してる?お昼休みかしら?」


「あっ、いえ、今日は休みで家にいました」今まで寝てたとは言うまい。


「あら、そうなの。んー、じゃあちょっと出てこれる?」


「・・・えっ!今からですか?」


「うん、予定があるなら別日でもいいわよ」


予定があるなら、2度寝をしようとはしない。「何も、ないです」


「あら良かった。じゃあ、どうしようかしらねえ」


「あの、ちょっと待ってもらってもいいですか?寝起・・・何も準備してなくて」


「もちろんよ、急でごめんなさいね。場所はメ ールするから、そこに来てくれるかしら」


「わかりました」



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