隣の席の青髪美少女は、負けヒロインになりたくない!
夜兎ましろ
第1話 青髪美少女な幼馴染
「今日から高校生か~」
俺――
高校入学を機に親元を離れ、都会で一人暮らしをしながら高校生活を始める予定だったのだが――
「なんで置いていくのよ! 一緒に住んでるんだから一緒に出てくれてもいいじゃない!」
そう言いながら怒っているのは、俺の幼馴染で、なぜか一人暮らしするはずだった俺と一緒に暮らすことになった青髪の美少女、
夏海は、なぜか俺と一緒に親元を離れて都会に出てきて、同じ高校に通うことになり、一緒に住んだ方が楽だろうということで同居している。
まあ、夏海とは長い付き合いなので一緒に住むのは別に苦ではないから良いのだが。
「夏海が準備するのが遅かったから、先に出ただけだよ」
「ちょっとくらい待ってくれてもいいじゃん~」
「早く学校に行きたかったんだよ」
「たしかに今日から高校生活が始まるんだもんね。ワクワクするよね」
「まあな」
俺たちが談笑しているうちにいつの間にか学校にたどり着いていた。
「それじゃ、行こっ」
「ああ」
体育館に行き、指定された席につく。
気のせいかどうか分からないが、周りの生徒たちから微かに香水の良い香りが漂ってくる。
(これが都会か。みんな同じ制服を着ているはずなのになぜかお洒落にみえる……)
皆が席についたのを確認すると、校長が壇上に上がり、長い話を始めた。
それを聞いていると、眠くなってしまったが、頑張って耐えた。だが、周りを見てみると爆睡している生徒もいるようだった。
♢
校長の長い話に加え、校内の規則などの説明を聞き終えた俺たちは、自分たちの教室に入った。
どういう偶然か夏海とはクラスまで一緒なのだ。
それどころか席が隣同士という偶然まで重なっている。もはや運命すら感じてしまうレベルだぞこれ。
初めての都会での学生生活。
緊張するが、楽しみでもある。
「陽太、緊張してるの?」
「そりゃな。初めての都会での学生生活だぞ? 緊張しない方が無理だって」
「まあ、そうだよね。たくさん友達作ろうね!」
「ああ、頑張るよ」
俺と夏海が話していると、前に座っている「絶対陽キャだろ!」と言いたくなるくらいに周りに多くの生徒が集まっている茶髪の男子生徒が俺たちの話を聞いていたようで話しかけてきた。
「よっ! 二人はこの辺の出身じゃないのか?」
「「…………」」
突然話しかけられたせいで、俺と夏海は困惑した表情を浮かべてしまった。
すると、その男子生徒はハッとした表情で自己紹介をし始めた。
「あ、悪い悪い。急に話に入ってきたらビックリするよな。俺は、
自己紹介をしてくれたので、俺たちも自己紹介をすることにした。
「さっきは困惑しちゃってごめんな。俺は、松永陽太だ。こちらこそよろしく」
「私は、陽太の幼馴染の青山夏海よ。よろしくね」
「陽太に夏海か。改めてよろしくな!」
俺たちの自己紹介を聞いた俊介は、とても嬉しそうに笑顔を見せた。
これは、ここにきて初の友達ということかな。俺の学生生活は一歩前進したぞ。
俺は心の中でガッツポーズをした。
そんなことをしていると、俊介は先ほどの話の続きが聞きたがっているようだった。
「それで、さっきの話の続きだけど、二人はこの辺の出身じゃないのか?」
「ああ、俺たちはここから少し離れた田舎なとこから来たんだ」
「そうなのか。どうだ? 都会は気に入ったか?」
「まだ来たばかりで分かってないことが多いけど、今のところは気に入ってるよ。俊介とも出会えたしな」
「おっ、嬉しいこと言ってくれるねえ。俺も二人と友達になれて嬉しいぜ!」
「ありがとう」
三人で話していると、担任の教師だと思われる背が高めの女性が教室に入ってきた。
その女性が入ってきた途端、皆が席につき、静かになった。もちろん、俺たちも。
「今日は授業はないので、すぐ帰宅することになるが、明日からは授業が始まるので教科書等を忘れずに持ってくるように。今日はこれだけでいいかな。それでは、解散」
結構、サバサバした先生だな。
教科書を忘れずに持ってくるように伝え終えると、もうホームルームは終わった。
まあ、そのお陰で他クラスよりも早く終わったから良いか。
「それじゃ、二人ともまた明日な! 俺は用事があるから帰るね!」
「「また明日~」」
俊介はホームルームを終えると急いで教室を出て行った。
「早速友達、できたね」
「ああ、高校生活はいいスタートを切れたかもな」
「そうだね」
「それじゃ、俺たちも帰るか」
「その前にちょっと待って」
俺も帰宅しようと席を立ち上ろうとしたのだが、夏海が何か話したいことがあるようで待つように言ってきた。
夏海の表情は真剣そうな表情に見える。
重要な話かもしれないと思った俺は、立たずにそのまま座って、夏海の方に体を向けた。
「大事な話か?」
「うん、とても大事」
「何だ?」
夏海は俺の前で一度、深呼吸をしてからとんでもない一言を言い放つ。
「……付き合わない?」
その一言を言われた瞬間、俺の周りだけ時間が止まったような錯覚に陥った。
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