空からはヒロインは現れない〜異世界でチート無双したい俺と天才王女の新たなる旅路〜

新有機

第ゼロ話 異世界での別れ

「敵だ!大砲の準備をしろ!」


「隊長、大砲の準備ができました!」


「よし、私が合図をしたら一斉に球を打つんだ。いいな?」


「「「了解しました!」」」


「3、2、1、、、発射!」


バンッ!バンッ!


タンマイン州西部

今はハーマイド帝国とレントロン王国の戦争真っ最中だ。

敵国ハーマイド帝国の狙いは我が国の宝、エノーマスクリスタルだ。

名前の通り、この鉱石には無限大の魔力が眠っており、使用すると大魔法使いの魔力量も超えてしまい、今の技術じゃ考えられない魔法だって撃てるようになる。

ただし、このクリスタルを使ってしまうと消費者にも影響が出てしまう。うまく魔力がコントロールできなかった場合、消費者が死んでしまう場合もある。なので大切に保管されているのだが、独裁国家ハーマイド帝国がそれを狙って我が国に攻撃を仕掛けてきているということだ。


「うわァッッッッ!」


「大丈夫か!」


「大丈夫だが、動けない、運んでくれないか?」


「わかった。負傷者が出た!応援を頼む!」


正直言って我が国は戦力不足だ、負けるのも時間の問題だろう。クリスタルを奪われて完全に全世界がハーマイド帝国に支配されてしまう。

そこで私は思いついたのだ。


「リエルよ、時間だ」


「わかりました。お父様」


我が娘にエノーマスクリスタルを持たせて逃げてもらうという作戦だ。それもこの世界じゃない、別の世界に。


「最初は娘一人で別の世界に逃げさせるのも心配だったんだが、この世界にお前がい


てもクリスタルの魔力量で場所がバレてしまうからな、それに、君たちがいるのなら、問題もないだろう。」

目線を娘のよこに立っている男女二人に向ける。


「わざわざ私たちなんかにこの役目を任せていたただきありがとうございます。マリ

ウス様。」


「リエル様は俺たちが全力でお守りします。」


そういって深々とお辞儀をした。

彼らはフェミエルとランパード、娘の幼馴染でずっと昔から娘と過ごしており、戦闘

力も一級品、彼らなら任せられるだろう。


「うむ、しっかりと守り抜いてくれ。」


そして座っていた椅子から立ち上がり。


「最終確認だ。お前たちを転送する世界は第六宇宙の地球という星の日本だ。言語も大体同じだし、そこの世界から生まれ変わったという人とも話したことがある。くれぐれも魔法は公の場では撃たないでくれ。そしてその世界に行くのにはクリスタルを使用する。失敗は許されないから慎重にやってくれ。」


そしてそっとリエルの頬に手を添えた。

「我が娘よ、お前に最後のおつかいを出してもいいか?」


「いいよですよ、どんなものでも、私も成長しましたから」


「わかった、じゃぁお願いだ」


背一杯、今にも流れ落ちそうな涙を我慢していう。


「この戦争を終わらせて、またわしと再会しよう」


「わかりました。お父さん」


そう呼ばれたのは初めてだった。少しばかり距離が縮んだように思えて、少しばかり涙も堪えやすくなった。


「では、魔法陣の中に立ってくれ」


「「「はい」」」


三人が魔法陣の中に立つ。そして、フェミエルが魔法を唱え始めた。


「我が内、そして輝きし鉱石に眠る魔力たち、我が杖の中に集い我が力となれ」


上に掲げたフェミエルの杖の先に魔力が吸い込まれていく。


「我が作り上げし魔法はこの星の壁をも越え、世界の壁も越えてゆく」


魔力の量が多すぎるせいか、部屋が激しく揺れ始めた。


「我らの旅はこの国に始まり日本へと続いていくだろう」


さっきまで座っていた椅子も倒れてしまい、窓のガラスも砕け落ちた。


「そんな我らの旅の始まりを今ここに創りたもう」


今にも泣き崩れそうになったが、そんな姿は娘も見たくないと思い、必死に立ち尽くす。


「そして我らを正しい道へと導くのだ」


見えていた小さな星も全て雲に隠れて雷が鳴り響く。


「解き放て!」


そして、いろいろな感情が乗った顔を娘に向け、


「頑張ってこい!」


そういった。


「テレポート!」


いきなりピカっと光ったかとおもって魔法陣の方を見たら、もうそこに娘たちの姿は

なかった。

隣にいた秘書が私に聞いてくる。


「最後、娘さんはどんな顔をされていましたか?」


私は倒れた椅子を治しながらいう。


「今まで見てきた人の誰よりも頼もしい顔をしていたな」


秘書がもう一度私に言ってくる。


「おつかい、成功するといいですね」


私は秘書の方を見て。


「そうだな」


と笑顔でいった。


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