4章 ピエール王国を目指して
第14話 キュー、魔法がとける
コング達は食料のほし肉、ナッツ、水筒に水を入れて準備をしていた。
ホビットのジルもピエール王国に行って見たいという事で、仲間に加わる事になった。
「ちいはまた来るかな?」キューが言った。
「今頃、何をしているのだろうな」とコング。
その時、コングのポケットから、エメラルドグリーンのネックレスが落ちた。
「うわぁ。きれいなネックレス」キューが拾った。
「やろうか。前いた所でもらったものだが、俺には使いみちがない」
「ちょっと見せて」ジルが
「これは時空を変化させる魔法がかけてある。
かなりのお宝だぞ」
「金になるのか?」コングが
「いや。お金には無縁だ。使い道もわからない」
「やはり、いらない。やるぞ。キュー」
「やったー。きれいなネックレス」キューは首にかけた。
「ブタになんとかというやつだな」コングがからかった。ジルも笑った。キューは意味が良く分からなかった。
キューは井戸に水をくみに水筒を持って歩いていた。キューが水をくんでいると、ネックレスが光り輝いた。
「うわぁ。何だ。光ったぞ!」キューがびっくりしていると、1メートルくらいの空間にちいが現れた。
「痛い」ちいがしりもちをついて言った。
「ちい!」キューは嬉しくなった。
「今日から夏休みなの」ちいは嬉しそうに言った。「夏休み?何だい?」キューは不思議そうにした。
「いいの。こっちのこと。お金は取り返したの?」
「うん。返してもらった。なぜか盗人と仲間になったよ。悪い人じゃないみたい」
「え~。大丈夫なのかしら」ちいは不安そうにした。
「これからピエール王国に皆で行くのだけど、ちいも来るかい?」
「ピエール王国という所?一緒に行く!」
「よし、コングの所に行こう!」コングはちいが無事な事に安心した。危険な旅が続く事がちいにとって心配だったが、連れて行くことに同意した。ジルはこの大陸の地図を持っていた。ピエール王国までの道のりに大きな山があった。山に囲まれた国だった。海にも面している。山を越えるか、船で入るかどちらかだった。皆で相談し、航海はやめてなんとかして山を越えようと決まった。
「しかし、ゴールドクリスタルを少しばかり使う訳にはいかないのか。俺の金ばっかり使っているぞ」コングが愚痴をこぼした。ジルは「そのクリスタルをお金に換えたら、馬10頭でも運べないくらいの量になるぞ。現実的じゃない」
「役にたたないクリスタルだな」コングは文句を言った。キューは申し訳なさそうにした。「よし。準備は整った。もう日没だ。今日はゆっくり休んで、明日の朝に出発だ」コングが言った。皆はテントを張って、寝ることにした。夜になり、風そよそよ吹いていた。コングとジルはもう寝ていた。ちいは寝てしまうと、現実の世界に戻ってしまうかもしれないし、ちっとも眠くなかったので、テントの外に出た。満月だった。月の美しさに見とれていると、ガサガサ音がした。キューだった。
「なんだか寝られなくてね。ちいたんも?」
「ちいたん・・」ちいは照れた。
「あ、ごめん。あだ名をつけちゃった」キューも照れた。
「いいよ。ちいたんで。キュー、少しは記憶戻ったの?」
「いや、全然。どこで生まれてどこから来たのかさっぱりだよ」
「そう。今に思い出すと思うよ。素敵なネックレスね」
「ああ、コングにもらったんだ。すごい魔法がかけてあるのだって。空間がどうのこうの」
「ちょっと見せて」ちいはネックレスを触った。すると、ネックレスはまた緑色にひかり、キューの体も光り輝いた。満月から一本の青い光が一直線に伸びて、キューに当たった。キューはブタから人間になった。
「キュー!いったいどうしたの?まほう?」ちいはびっくりした。
「ぼ、僕は人間になった。ブタから人間・・」
「キュー・・裸・・」ちいは赤らめた。キューは素っ裸だった。
「あ、ごめん」キューは草むらに隠れた。
「テントにタオルがかけてあるわ」
「それをくれ」キューはタオルを巻いた。ふたりは笑った。
「記憶が戻ってきた。ピエール王国にいたんだ。そこからやってきた。見てはいけない壺があったのだけど、お腹がすいていて、呪いの魔法がかけてあったのに、僕は覗いてしまったんだ。そうしたら、ブタになった。そこからどうしてここへ来たかは覚えてない」
「あ、なにか光ったわ。何かしら」
「ちいたん、ちょっとこっちへきて」キューが身構えた。暗闇の中から魔物が現れた。熊のようなトラのような正体不明の魔物だった。
「武器もないのに!」キューとちいは怯えた。魔物が手を伸ばしてきた。キューは神経を集中して、手に力をこめた。すると、キューの手からぐるぐると
「すごい!すごい魔法ね!」ちいは驚いた。目をパチクリさせている。
「か、風の魔法・・ピエール王国の伝統の風の
「なんの音だ」コングとジルが物音で目を覚ませて起きてきた。
「キューがすごいの。魔物をたおしたのよ!人間にもなったの!」
皆はキューを見た。ブタに戻っていた。
「ブタのままじゃないか」コングが言った。
「本当よ。魔物を魔法で倒したのよ」ちいは必死になって説明した。
「とにかく明日は早い。今日はもう休もう」ジルが言った。ちいは気分がすっきりしなかった。人間のキューを見てほしかった。コングは倒れているキューをテントまで運んだ。寝ているようだ。すーすー息をしていた。満月は雲に隠れていた。
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