第17話 悪魔ルシファーとの戦闘

『我が名はルシファー。

 偉大なる悪魔から神へとなるのだ。』


 ヌアンテは翼を広げ、上と飛んでいく。

 聞いたこともない低い声で話している。

 瞳の色が紫だ。

 ヌアンテの意識とは違う人物が

 話しているようだ。


「ルシファー?

 ヌアンテはどこにやった?!」


 クロンズは恐る恐る叫ぶ。

 コウモリの光宙はクロンズの影に

 隠れた。ヌアンテとともに過ごしていた

 ハリネズミの微宙は、ヌアンテなど 

 気にしておらず、地面にぞろぞろと行列を

 なしているアリをただただひたすら

 眺めていた。


『ヌアンテ…我が身体の中におる。

 一体化したのだ。

 悪魔と天使の力を持つ者は貴重な存在。

 もうすぐ、悪魔そのものになるだろう。』


「一体化!? なんだって。

 ヌアンテは天使のはずだ。

 なんで悪魔なんかに

 ならなくちゃいけないんだ。」


『汝に知る必要などない!!』


 ルシファーは手を振り払った。

 すると、振り払った手から物凄い強い風が

 吹き荒んだ。


「うわぁぁ!!」


 ちょっとの力でクロンズたちは

 勢いよく飛んで行った。

 

 硬い壁に叩きつけられて、

 地面にうつ伏せに倒れた。

 体中に外傷を負った。

 息吹は怖くて何も発言することができず

 同じように床にたたきつけられた。


「うぅう…。」


クロンズは傷だらけだったが、

意地でも起き上がった。


(これは、息吹の問題じゃない。

 ヌアンテの状態だ。

 今は、この世界から出さないと!!)


 クロンズは指をパッチンと打ち鳴らして、

 息吹の地面の下に黒い空間を出して、

 別次元に送り込んだ。


「息吹は元の世界に戻ってろ!!」


「クロンズ!!ヌアンテ、助けてね!!」


「ああ、任せておけ。」


 ぶわんと広がった丸く黒い別次元の世界は

 息吹が見えなくなると一瞬にして消える。


『汝が戦うというのか。』


「さーてね、どうするか。」



 クロンズは傷だらけになりながらも、

 翼を広げ、ヌアンテに憑依した

 ルシファーに立ち向かった。


 ルシファーがまた軽く腕を振り払うと、

 強風が吹き荒れる。

 渦を巻いて、クロンズはくるくると

 体がまわされてしまう。


「ち、ちっくしょーー。」


 どうにかして、体を動かした。

 もがいてもがいて、正常に戻そうとする。


『無駄な足掻きだ!!!』

 

 ルシファーは上から下へ腕を振り下ろす。


 クロンズの体が高く高く上がったかと思うと、思いっきり地面へと叩きつけられた。

クロンズは何も抵抗もできなかった。

不思議な力で本来使つべき力を

発揮できないようになっていた。


うつ伏せのまま、身体中あちこちが

傷だらけになり動くことができずに

がくっと倒れた。


ルシファーの翼がバサバサと動いている。


光宙は体を隠して、バレないようにと

声を押し殺して見守っていた。



微宙は空気を読まずに

ずっとたくさんの行列アリを

追いかけていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る