第10話 悪魔の世界
コウモリたちがたくさん飛んでいた。
黒く細長い三角の屋根が
天高く聳え立っていた。
天国と地獄に近い悪魔の集会所に
ツノを2本生やし真っ黒い翼を背中につけた
悪魔たちが集まっていた。
そこでは小さい子供達がドクロを
ボール代わりにサッカーを楽しんでいる。
はたまた、バレーをしていたり、
内臓だろうかピンク色の
丸いものでゴルフを楽しむ大人の悪魔や、
目玉をピンポン玉にして、
卓球をするものもいる。
そんな場所にクロンズはコウモリの光宙と
ともにミッションをもらいに飛び立った。
「あーー、クロンズ、
今朝は寝坊したのか?」
「寝坊じゃないわ。
この時間に来たかったんだ。
ライエル、
お前こそ、昨日はなんで
来なかったんだよ。」
「俺は、ズル休みに決まってるだろ。
悪魔は良い子ちゃんするわけないだろ。
真面目にするのはクロンズくらいだわ。
今日もサボる奴はたくさんいるわけだ。」
ライエルは、腕を組んで考える。
クロンズは根っからの悪魔のはずだが、
なぜかミッションは真面目に
こなしていく。
「お前は真面目すぎるんだよ。
たまには手を抜けって。」
「は?
いつか、俺が体壊した時なんて、
俺以外みんなミッションこなした
らしいじゃん。
何、他のやつら俺がいるからって
安心しきってる?」
「はいはい。それほど、
クロンズが立派様かっぱさまなの。
優しすぎるんだよ。
だってさ、よく聞くけど、
お前、天使の仕事奪ってる
らしいじゃん。」
「俺は奪ってるんじゃない!
あいつが悪いんだよ。
天使のくせに天使の仕事しないから。」
「……根本的にお前の発想は
悪魔じゃないよなぁ。
生まれるところ間違ってないか?」
「は?俺は悪魔になりたいの!!
史上最強の悪魔になりたいだわ。
それは譲れないっての。」
「…うーん。お前の場合は史上最強の
神様になりそうな気がするけど。」
「何か言った???」
「なんでもないって。
ほら、ミッションもらいに行かないと
いけないんだろ?
真面目やさん。」
「おう、こっちは生活かかってるからな。
稼ぎ頭は俺だけだから。」
「ただ単に1人暮らしってだけだろ。」
「げ、ばれた。」
「クロンズ、ほら行くぞーー。」
光宙が、悪魔の集会所に
先に飛んでいくのをクロンズは
慌てて追いかけた。
悪魔の集会所ではその日の働く
ミッション仕事をもらえるところだ。
数をこなせばこなすほど位があがり、
強い悪魔として表彰させる。
悪魔という性格上、怠けることも多く、
意地悪することもあり、
他人を蹴落とすこともする。
「誰だよ、目覚まし時計を
ギリギリにセットしたやつ、いや私だわ。
ったくもう、なんでこうなるかな!!」
ブツブツを文句を言いながら、王座の間に
座る悪魔のトップ。
王様の階級を持つサタンが紙タバコに火を
つけて、心を落ち着かせた。
「ふぅー。」
クロンズは王座の間に跪き、お辞儀した。
「サタン様、
本日も仕事をいただけないでしょうか。」
顔を見ず、下を向く。
理由はある。
サタンはよく寝坊をする。
寝癖が決まっていないのを
誰かに見られたらと思うと、
恥ずかしくなって
1人の悪魔の命が飛んだ過去がある。
今日は盛大な髪型になっていた為、
なるべく顔を見ないように敬意を
払っているかのよう下を向いたまま
動かないようにしていた。
「あ、クロンズね。
えっとちょっと待って。」
軽いノリで答えていく。
透明なウィンドウを開き、
悪魔の仕事情報を確認した。
デジタル仕様のチラシを指で弾いて、
コピーする。
クロンズの足元にひょいっと飛ばした。
透明なウィンドウは、長方形から正方形に
切り替わり、的確な仕事情報を送る。
この情報は見終わると画面とともに
床に吸い込まれて消えていく。
頭の中に叩き込まないと
いけないものだった。
内容を忘れたら、最後、
悪魔の首が飛ぶ厳しい世界だった。
ミッションをクリアしたら、
相当の対価がある。
報酬はたっぷりもらえる。
悪魔の欲しいものはお金ではない。
悪魔として生きていくための
人間の正気だ。
罪人として生きてきた人間たちが
死刑にされている。
その者達を瓶つめにされて力を溜め続け、
サタンが放出して、
ミッションクリアした
悪魔たちに分け与えている。
目には見えないものだが、悪魔として
生きていくには必要な力だった。
「今回のミッションも前回同様の
子ども達だ。
手を抜かずにな。
そうそう、いつもの天使のヌアンテも
バディに組んであるからな。」
目玉がぎょろっと出ていたイカを
貪り食べながらサタンは話す。
「サタン様、失礼ながらなぜ俺は
ヌアンテと一緒にやらないと
いけないのですか、
そろそろチェンジしていただきたいの
ですか…。」
「天使とのバディは神様が決めた
組み合わせだ。
私がどうこう言える者ではない。
口を慎め。」
サタンは王座の脇に並べられた
人間瓶詰めを魔法でバリンと割った。
中からドロドロと透明な液体ごと
死体が落ちてきた。
サタンは機嫌を悪くするとすぐ
物に当たる癖がある。
家来たちが急いで、
ドロドロの後始末をしていた。
「も、申し訳ありませんでした。」
クロンズは殺されてしまうことを恐れて、
土下座をした。
「おう、それで良かろう。
もう、行け。
目障りだ。」
「は。」
クロンズは、膝をついて敬礼をすると、
そそくさと王座の間を光宙とともに
出て行った。
体の震えがいつまでも残っていた。
空では黒い雲をはおった満月が
輝いていた。
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