第20話 悪魔大蛇VS二人の王女①
「――こっちであってる?!」
「ハア……ハア……そこを右に曲がった先です!」
あのまま
なので、近くに危険が無い、広い場所へと
(一番は
当然、
このままでは直ぐに追いつかれてしまうが、なんとか、
この場所は全長五十メートルを超える
アリスがエターナルマップを見た記憶では、この辺りで一番
「アリス、今のうちに息を整えておいて」
「……クレアさん、何をする気ですか……?」
「まともに戦ったら絶対に勝てないからね。ここにアレが来たら不意打ちで一発入れようと思う。さっきも見せたろ? 先手必勝だよ」
さっきとはアリスを助けてくれた時の事を言っているのだろう。
確かにあの不意の一撃によって
今回もそれが決まれば、大きな隙を作ることは可能かもしれない。
「――来た!」
クレアは
次の瞬間、通路が爆散し、
「はあああああああ!!」
クレアは
しかし、
「――な!?」
回避されるとは思わなかったクレアは驚きの声を上げる。
「なんて筋力……あんな大きな頭で今の一撃を回避するなんて……」
アリスから見ても完璧な一撃に見えた。しかし、
あの巨体では考えられないほどの俊敏さだ。
「ならもう一発!!」
クレアは身を翻し、もう一度長槍を振るおうとする。しかし、完全な不意打ちすら通用しなかった
「――まっず!!」
二撃目を外し体勢を崩したクレアに向かって、
しかし、クレアは長槍を持った手とは逆の手で身体を支え、バク転しながら
「――あっぶなー……」
クレアが立っていた場所を見ると、
この顎の力で噛み砕かれていたらと思うとゾッとするが、問題はそれだけではない。
「――あれは、毒ですか……?」
抉れた地面が一部、溶けているのだ。
おそらく、
見つけた獲物を鋭い牙と顎で噛みちぎり、それで死ななければ、流し込んだ強力な毒で殺す。
まさに『悪魔』と呼ばれるに相応しい魔物だ。
「……掠っただけでも死んじゃうなこれ……だからって諦めるつもりは無いけどね。
アリス! 援護お願い!」
再びクレアは
「分かりました!
アリスは炎で構成された六本の矢を放つ。
狙いは
(頭を狙った方がダメージを与えられるかもしれませんが、クレアさんの一撃を躱した以上、私の魔法など当たらないでしょう。なら、あの大きな長い胴体に確実に当てます)
アリスの放った火炎矢は放物線を描きながら、狙い通り
すると、
「――クレアさん!!」
「分かってる!!」
その一瞬を突いてクレアは跳躍し、先程は避けられた頭部に向かって槍による連撃を放つ。
「はあああああああああああああ!!!!」
クレアの高速の突きに
「どうですか!?」
「――ぐ、やっぱり硬いな……これじゃ、ボクの腕か槍が先にイカれそうだよ」
「アリス! 今の攻撃ぐらいじゃ
「はい!」
クレアの言う通り
その姿にダメージを受けた気配は無い。
「――困りましたね……」
「……ボクの槍もアリスの魔法も全然効いてないみたいだ」
いや、まったくダメージが無いわけではないだろう。
魔法が直撃した場所は焼けて鱗が黒ずんでいるし、鼻先は槍の一撃で傷ができている様に見える。
しかし、どれも
全身を覆う硬い鱗に攻撃が全て防がれてしまったのだろう。
「クレアさん一旦引いて――」
突如、
「――きゃ!?」
「――うっ!?」
鼓膜が破れるかと思うほどの音に、咄嗟に耳を塞ぐ二人。
どうやら、今のアリスたちの攻撃で
咆哮が鳴り止むと、
なんと、丸太の様な胴体の至る所が隆起し始め、鱗の隙間から新たな肉が形作られ始めたのだ。
盛り上がっていく太い肉の塊は、次第に四つに分岐し指のような形になる。
そして、指の先には凶悪に曲がった爪が現れ地面に突き立つ。
「……頭だけでも厄介なのに腕まで生えてくるとか勘弁してくれ……」
生えてきた腕は全部で十二本。腕の長さは三メートルほどだろうか。
そうアリスが
「――アリス避けろ!!」
クレアの叫びと同時に、
「くっ……」
アリスは鋭い痛みに声が漏れる。
クレアの声に反応して咄嗟に横に飛んだが、回避しきれずに肩を抉られてしまった様だ。
流血する肩が灼熱の様に熱い。
「アリス!」
クレアは高速で伸びてくる腕を長槍で弾きながら、アリスの元に駆けつける。
「――血が……」
クレアはアリスの肩を見て顔を顰める。
「だ、大丈夫です……少し、掠っただけなので」
「肩を貸して」
クレアは倒れたアリスを担ぎ、岩陰まで運んでくれる。
「治せる?」
「……はい」
ズキズキと心臓の鼓動に合わせて痛む肩を抑え、アリスは治癒魔法をかける。
幸い爪には毒がない様なので外傷のみだ。もし、毒があったら治癒魔法では解毒できなかった。
「――まさか、腕が伸びてくるとは……油断しました」
「あの腕は厄介だね……これでより一層、
「先程のように、私が魔法で
「いや、おそらく
「――そんな……」
クレアの長槍による攻撃が通用しないのなら、生半可な魔法で
アリスが使える最大の魔法を全力で放てば、ダメージを与える事も可能かもしれないが、アリスとクレアも巻き込まれてしまうだろう。
「アリス、そんな顔しないで。まだ手がないわけじゃない。あれを倒す方法は一つだけある」
「本当ですか!?」
「うん……でもこれは賭けになる。失敗すれば間違いなくボクたちは死ぬ」
「構いません。他に策も無いですし、その賭け、私も乗ります!」
「ふふ……アリスならそう言ってくれると思ったよ!」
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