第9話 仲直り計画

 


 そして翌日。木村さんにそのことを話す。所謂木村さんと佐々木さんと会う予定を立てたいという話だ。



「そういうわけだ。協力してほしい」

「分かった。とりあえず。その時間にカフェに行けばいいのね」

「ああ」


 これも佐々木さんに相談した結果だ。


 どこで会うのが好ましいかという事で、カフェに決まった。カラオケだと気まずいし、カフェだと、席を立って別の席に行くことも可能だからだそうだ。

 先払いの店だから、最悪逃走することも可能だ。


 だが、一応俺にもついてきてほしいらしい。

 まあ、そりゃあいきなり二人きりはきついか。


 そして土曜日。ついに決行日だ。


 俺と佐々木さんが一緒に木村さんが待つ席に行くという流れだ。


 木村さんには無理に話しかけないように言っている。というのも下手に刺激したら佐々木さんが緊張して逃げ出す可能性もある。

 逃げるのは佐々木さんの権利だからいいのだが、さすがにいきなり逃げなきゃいけない状況にするのは悪い。

 木村さんには佐々木さんが話しかけるまで何も言わないでと、言っている。

 ちなみに気になるという事で優香ちゃんもこっそりとついてきてたりする。

 本人は隠れているつもりなのだろうが、バレバレだ。



「緊張……する」


 佐々木さんはカフェでカフェオレを飲む木村さんを見てそう呟いた。



「大丈夫だ。俺は佐々木さんの見方だから。……とはいえゆっくりでいいぞ」

「……うん」


 そして、佐々木さんは、ゆっくりと席に向かう。


 そして席に座り。


 無言。無言だ。

 なんの会話も生まれず、隣のおばちゃんたちの会話だけが聞こえる。

 正直俺も気まずい。

 二人のためじゃなかったらもう帰りたいくらいだ。だが、そんなの許されない。

 俺はこの二人が以前どんな関係だったかは知らないが、二人にとって良い関係に戻ってほしいと思っている。


「あの……」


 佐々木さんが口を開いた。


「ごめんなさい」途端に謝る。

 それを受けて、木村さんの顔は真剣な面持ちになった。


「私、あなたとの日々が思い出せなくて……気まずいの」


 よく言った、佐々木さん!!


「だから私、あなたとは仲良くできないかもしれない。……少なくとも今は昭さんの方が好ましく思っているから」

「……」

「だから謝りたくて。だから本当にご―」

「謝る必要ないじゃん」


 佐々木さんの言葉を遮るように木村さんが言う。


「だって、それは美優のせいじゃないもん。それに私は忘れられてもいいと思ってるよ。だってまた作ればいいもん。……もちろん昭君に負けないくらい頑張るつもりではあるけど」

「……でも、私は。やっぱりつらいの。誘拐されてた記憶を思い出して。だってそうじゃない。私以外の人たちは監禁されたことがない。以前関わり合いがなかった昭君とは喋れた。優香ちゃんと喋れている。でも、それ以前のあなたにはやっぱり無理。……私だめだよね、友達だったはずのあなたにこんなに気を使わせて」



 佐々木さんをいったん落ち着かせるべきか。いや、木村さんが何か言いだしそうだ。


「私はだめだと思ってないよ。それに気を使ってないって言ったらうそになるけど、でも、美優のこと大事なのは事実だもん。大事に思ってなかったら気を使わないよ。でも、私はやっぱり気兼ねなく美優と話したい。だから、やり直そう。私が美優を誘拐の記憶を忘れられるくらい幸せにしてあげる」


 そして、木村さんは佐々木さんに抱き着きに行く。

 佐々木さんは少し躊躇する動きを見せたが、すぐにそれを受け入れた。

 これでこの二人はもう大丈夫だろう。


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