第11話 カート
そして様々なところ(きついやつ以外)乗ったところで、昼ご飯を食べようということになった。
「昼ご飯はここで食べましょう」
「おう……ここって。そういう事か?」
そこにはかなりの数のカップル割の食べ物があった。
「ほかにも店は色々とあるよなあ」
「そうだねえ」
「で、ここ?」
このカップルが行くような店に?
俺たちカップルではないはずだが。
「だって、もらえるサービスは使っとかないと」
「……」
「私が諦めると思う?」
「思わない」
「じゃあ、入ろう!!」
抵抗するだけ無駄だ。諦めてその店に入っていく。根勝負で俺が勝てるわけがない。
「カップルですか?」
「カップルです!!」
と、俺と恋人つなぎした鈴奈が笑顔で答えた。
(定員さん嘘なんです。俺とこいつはカップルじゃないんです)
そして俺たちはそのままカップルっぽくイチャイチャして席に座った。一応証明のハグもしっかりとした。普通に割引金額に似合う分の恥ずかしさはあった。……鈴奈の野郎、涼しい顔をしやがって。
「浩二君、何食べる? このカップル専用のパフェでもいいよ?」
「俺はそんなに甘いものは食べられないな……というかまずはしっかりとご飯食べようぜ」
「はーい。わかりましたー」
そして俺はとりあえずチャーハンとラーメンを頼んだ。流石にご飯系はカップル何とかがないみたいで良かった。
「ねえ、遊園地らしくなくない?」
「は?」
「チャーハンとラーメンって。もっとオムライスとかにしようよ」
「俺の気分だからだ」
別に誰にも俺の決めたメニューを変える権利なんてない、と俺はラーメンを頼んだ。
食べると美味しかった。ラーメンの麺がしっかりとしていて、スープもちょうどいいあっさりさだった。
鈴奈は不満そうな顔をしていたが、俺が食べたい奴を選んで良かったと思える味だ。
ちなみに鈴奈はクレープとパフェという、昼ご飯に似合わないような料理を頼んでいた。
そしてご飯を食べた後、ゴーカートに乗った。
「私が運転するからね、分かった?」
「おう」
まあ、俺も運転はしたいところだが、鈴奈のために来た場所なのだ。断るほうがおかしいというものだ。
「じゃあ、行くよ!」
そして車が走り出す。
「ちょっ待て、早すぎないか?」
うっかりしていた。そうだった、この絶叫マシン好きの鈴奈が車をゆったりと走らせるわけがない。
「前に壁が迫ってるから」
「大丈夫。この私の運転技術を信じなさい」
「そう言う問題じゃないから。免許持ってないだろ」
そして鈴奈は間一髪のところで、カーブを曲がった。だが、その際にスピードが出過ぎていたからか、すごい遠心力がかかり、気持ち悪くなった。
「鈴奈、もう少しゆっくり頼む」
「オッケー、もう少し速くね」
「おい! 耳ついているのか?」
そして鈴奈は直線でスピードを思いっきり出す。もはや速すぎて、高速道路でも乗っているのかと言いたい。一応ゴーカートだから、そこまで最高速は出ないはずだが。
そして、三週目を回った時に、安心した。もうこれで、ようやく終われると、この地獄が終わると。
「ねえ、楽しかったね」
車から降りる際に鈴奈がそう言う。
「俺はずっと気持ち悪かったんだが」
「それも一種の楽しみ方でしょ? 良かったね」
「良くねえ」
「じゃあ、次荒れ乗ろっか?」
そして鈴奈が指をさしたところにあったのは、急降下を繰り返す絶叫マシンだった。
「おい、俺はのらないからな?」
「えー乗ろうよ」
「乗らねえ。まだ気持ち悪いんだよ」
「えへへ、もちろん冗談よ。私一人で乗る!」
そして鈴奈は列に無かtぅては知って向かって行った。……元気だな。
そして乗らないけど、動画を撮ってと頼まれたので、動画を鈴奈の方に向ける。
「取れてるよね? じゃあ今から地獄に行ってきます!!」
鈴奈はそう言って、乗り物は一気に下に急降下した。正直見ているのも嫌だ。目をつぶりたい。だが、そうすればうまく撮れない。仕方なく、鈴奈の顔にカメラを向ける。
鈴奈は絶叫しながらも楽しそうだった。これが朝は死にそうな顔をしていたんだから不思議だよな。
そして最後に俺たちは観覧車に乗った。
「ねえ、見てる? 浩二君」
「ああ、見てるよ」
「きれいだよね。なんで上空から見る景色ってこんなにきれいなんだろう」
「広い範囲が見えるからじゃね?」
「もう! そう言う話をしてるわけじゃないのよ! ねえ、浩二君。私たちってこんな景色が見れて幸せだよね」
「まあな」
この広大な景色、素晴らしいと思う。だが、今は何より、その景色を見てる鈴奈がきれいだ。日の光に当たっていて、いつもよりもかわいい。だめだ、そんなことを考えては、まるで、惚れているみたいじゃないか。
「何顔を赤くしてるの? 浩二君」
「赤くしてねえ」
「へー、まあいいわ。今はこの景色を見るほうが大事だしね」
「それはそうだな」
そして俺たちはしっかりとこの景色を目に焼き付ける。この景色を。
そんな中、鈴奈が、俺に抱き着いてきた。
「何をしてるんだよ」
「だって、私にとってここに来れるの最後かもしれないからさ。せめて今はいろいろ楽しもうかなって」
「楽しもうかなって、楽しむことがこのカップルみたいなものかよ」
「うん。そうだよ。だって本来こういうところってカップルで来るところだし」
「俺たちはカップルじゃないぞ」
「分かってるよ。気分だけ」
鈴奈は今の状況を楽しんでいる……それと同時にこれを人生の宝物にしようとしている。俺はまだここに来るチャンスが何回でもあるが、鈴奈にとってはそうではない。
どちらの方がこの観覧車を楽しめているかといえば、どう考えても鈴奈の方だろう。
そんなことを考えながら外の景色を楽しんでいた。
そしてすぐにまた地上へと戻った。
「あー、本当に楽しかった」
「そうだな」
「本当にありがとうね、私の我儘に付き合ってくれて」
「おう」
「でもさ、わたしってたまに思うんだよね。どうせ大人になれないなら生きてても意味がないかなって」
「っそんなことねえだろ」
「ありがとう、本当にそんなこと言ってくれて。まあ、気を使ってくれたんだろうけど」
「本心だよ」
「私ね、このまま死ぬのもやっぱりムカつくしさ、自殺という逃げの手を打つのも嫌だから、ぎりぎりまで楽しんで死ぬよ。後悔の無いようにさ」
「ああ、それがいい」
「じゃあ、次の計画を立てなくちゃね!!!」
気が付けば、鈴奈の明るさが戻っている。それを見て本当に良かったと思った。
そして帰り際に、「じゃあ、明日もよろしくね!」と、明るく鈴奈が言った。
「ああ」
「じゃーね」
そして俺たちは分かれて、家へと帰った。
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