告白作戦会議 ~美少女の幼馴染みに毎月1日に告白しています~

uruu

第1話 4月1日

 高校に入学した4月の1日。俺、佐原圭さはらけいは、幼馴染みである二宮姫乃にのみやひめのを朝から呼び出していた。場所は熊本駅にほど近い坪井川沿いの広場。図書館の裏にあり、人目に付かない場所だ。


「こんなところに呼び出して何?」


 姫乃は言った。俺と姫乃は小さい頃からの仲だ。家は少し離れているが近所の公園で遊ぶようになり、家族ぐるみの付き合いもある。


 成長した姫乃は誰から見ても美人。長身でスタイルもいいし、明るい性格でいつもクラスの中心に居る。中学の頃からモデルのような仕事もやっている。それに対し、俺は至って普通の男子に過ぎない。背も姫乃と大して変わらなかった。だが、俺は自分の気持ちに嘘をつけなくなっていた。


「分かってるだろ」


「何よ。言わないと分かんないわよ」


 姫乃は自慢の長い髪をいじりながら言った。


「……姫乃、俺はお前が好きだ。付き合ってくれ」


 俺は勇気を出して言った。


「とりあえず聞くけど、今日、エイプリルフールよね」


 姫乃が確認してきた。


「分かってる。でも、嘘の告白じゃないぞ。マジなやつだ。分かってるだろ」


「そうね……」


 姫乃はしばらく黙っていた。が、急に頭を下げた。


「ごめんなさい」


 はぁ、やっぱりか。俺は何も言えなかった。それにしても、今の間はなんなんだ、まったく。


 やがて顔を上げた姫乃は言った。


「じゃ、ランチ行こっか。お腹空いたよ」


 俺の手を取り歩いて行く。


「お前なあ、今、俺を振っただろ。すぐ切り替えすぎだ」


「だって、毎月のことだから、もう慣れちゃった」


「そりゃ、そうだけどなあ」


 実は俺は毎月1日に姫乃に告白している。1日と言うことに特に意味は無い。最初に告白したのが1日だっただけだ。振られて落ち込んだ俺に、姫乃は「次に告白したら付き合うかもしれないよ」と言ってきた。それを聞いて、ちょうど一ヶ月経った次の月の1日に再度告白してみたのだ。以来、ずっと毎月1日に告白して、全て振られている。


「それに、朝から告白ってある? 普通、夕方とか夜、デートの最後でしょ」


 姫乃が文句を言ってきた。


「今までずっとそれで失敗してきたから変えたんだよ。それに、成功したら今日は恋人としてデートできて楽しいかな、と」


「別に今のままでも私は楽しいけど」


「はぁ……俺は振られてショックなんだけど!」


 俺は姫乃の手をふりほどき、立ち止まった。


「そんなにいじけないでよ。別に今後絶対、圭とつきあえないと言ってるわけじゃないんだから。今はつきあえないけど、将来はわかんないよ」


 姫乃はいつもコレだ。今はつきあえないが、将来の可能性をほのめかしてくる。俺はどうしてもそれにすがってしまう。


「はぁ。じゃあ、どこに行く?」


「うーん、近くだし駅ビルかな」


 ここから駅ビルはすぐそこだ。俺たちは歩き出した。


「……今日はおごらないからな」


「なんでよ。いつも断っても払うくせに……。私のこと、好きなんでしょ?」


 これを言われると俺は弱い。だが、今日は反撃を試みる。


「俺はフラれたんだぞ。お前は恋人じゃ無い」


「あー、そうだったわね。じゃあ、逆に私がおごるか」


「は? 珍しい。やめとけ」


「何よ。これでもちょっとは悪いって思ってるわよ……」


 そ、そうなんだ……。いつも強気な姫乃がこういうことを言うのは初めてだな。


「お前……俺のことどう思ってるんだ?」


 思わず聞いてしまう。


「うーん、腐れ縁の友達以上恋人未満ってやつかな」


 納得してしまう。俺と姫乃は確かにそういう関係だな。


「……ま、今日は俺がおごるよ。俺が呼び出したんだしな」


 少し元気が出てきた俺はそういった。


「じゃ、赤牛のステーキね」


「は? お前、容赦ないな」


「はい、エイプリルフール。すぐ騙されるんだから」


「うざ……」


 姫乃はなぜか機嫌が良さそうだった。


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