ミレーナは入れ知恵したい。
※ 完全に下ネタ系なので苦手な方はお気をつけ下さい。
毎月26日は風呂の日だそうです。
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「毎月26日は風呂の日です」
「風呂?」
それがどうした、というマクシミリアンに、ミレーナは頭を掻きむしる。
「お風呂でイチャイチャって定番なんですよ! でもぉ、この世界の貴族って、メイドさんとかにお風呂手伝ってもらうじゃないですかぁ!!」
「まあ、そうだな」
「ってことは、カップルでイチャつけないんです、お風呂で!!!」
バンッ、とテーブルを強く叩いたミレーナの姿は――そしてその言動も――とても聖女とは思えない。
「有り得ない。お風呂イチャイチャがないなんて、有り得ない……っ」
「ミレーナ嬢、あなたはなにを――」
「イチャイチャしてほしいんですよぉ! マクシミリアンとベアトリスにッ!」
興奮状態のミレーナは、本人を前にして呼び捨てにしているという認識はないようだ。しかし、こういう状態のミレーナの発言が面白いことも理解しているマクシミリアンは、あえてここで叱責しようとは思わなかった。
「風呂でどうしろというんだ?」
「はぁ?! お風呂ですよ!? お互いに生まれたままの姿で、しかも石鹸とか泡泡しててっ」
「あわあわ……」
聞いたことのない擬音に、マクシミリアンは眉を寄せる。ミレーナが言っているのは、泡風呂というもののことだろう。マクシミリアン自身は泡の浮かんでいる風呂を好まないので、彼女がなにを言いたいのかいまいち伝わってこない。
「想像してみてください。泡で満たされている湯船、そこにベアトリスが入っていて、温まって頬は赤らんでいる。泡を手に取って、ベアトリスの肌を撫で『洗ってあげよう』って言ってからのぉ……ッ」
「ああ、なるほどな」
なんとなく、彼女の言いたいことは理解した。続きを促さなくとも、彼女は勝手に妄想を口にする。
「お湯が波打つとか、お風呂場だから声が響くとか、そういうのも良いじゃないですかぁ!」
自分が聖女という立場だというのを、ミレーナは完全に忘れている。このような妄想を口にするのが自分の前だけだろうとわかっていても、彼女を神聖視している人たちが可哀想になってくる。
「変なことを聞いても良いか?」
「なんですか」
「ミレーナ嬢は、ビーを好いているんだよな?」
「まあ、愛情度合いで言ったらシルヴェニア卿には負けるかもしれませんが、推しです」
「ビーに幸せになってほしいと?」
「当然です」
「……それは、その、私との子作りというのも含まれるのか?」
口に出せば、ミレーナはぴたりと動きを止めてマクシミリアンをクソ真面目な顔で見返した。
「シルヴェニア卿が、下手糞でなければ」
「…………」
「お姉様が、満足できてるようなエッ」
「それ以上言うな。多分大丈夫だから」
「なら、含みます」
この『聖女』の羞恥心はどこにあるんだ? と思いながらマクシミリアンは眉間を揉む。あまりにも赤裸々すぎるではないか。
要するに、性交渉においてベアトリスが満足しているのなら、彼女をトロトロに出来ているのなら、そういうのも込みでマクシミリアンと彼女に仲良くしてほしいとこの娘は言っているのだろう。
だがしかし、その内容は本人を前に要求することとも思えない。親から言われる「子供はまだか」とは意味が違う。
「……ミレーナ嬢の前世の世界では、そういうのが一般的だったのか?」
「はい? 推しに幸せになってもらいたいっていうのは、ファンとして当然じゃないですか。それに、本編で書かれない推しの幸せな姿を妄想するひとだってたくさんいましたよ。まあ、一般的ではなかったかもしれませんけど」
「それで? ミレーナ嬢自身はどうだったんだ?」
「…………………………いや、それはどうでも良いじゃないですか」
これはきっと、妄想していた部類なんだな。
そっと視線を逸らしたミレーナを見たマクシミリアンはそう理解して、他の案はないのか、と質問してみることにしたのだった。
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