第2話 滅亡都市
———遡ること十数時間前。
大陸中央に位置する城塞都市から
それはかつて栄華を誇った帝都ヴェロドローム。
10年前に巨大な【黒竜アルガンタラ】率いるドラゴンの大軍勢により滅ぼされた神聖アリアンツ帝国の首都である。
ホバークラフト式の
間もなくしてスライド扉が開け放たれ、防護マスクと丸みを帯びた防護スーツを装備した復興浄化隊の面々が続々と降り立つ。
足元に転がる片腕の取れた人形、割れた皿やラベルが剥がれた酒瓶など営みの
隊の中でも最も若いジュノン・アーセナルと次に若いルネ・サンジェルマンが先行して廃墟の【ドラゴ
「はぁー? ふざけんなし!」
計測
「ジュノン! 見てくれよ! 濃度が70%を超えてるぜ!?」
「ダメですね。廃墟のどこかにドラゴンの住処がありますよ」
ドラゴ濃度とは端的に言えば『ドラゴンの存在感』だ。数値が高ければ高いほど付近にドラゴンが存在していることを示している。
濃度が70%ともなると、完全にドラゴンの縄張りだ。数百を超えるドラゴンが周辺に存在していることが予想される。
「先輩、今すぐみんなのところに引き返しましょう」
ドラゴンは最悪最凶の生物である。
大型小型に関わらず恐ろしく凶暴で恐ろしく頑丈だ。人間を見たら脇目も振らずに襲いかかってくる。並の武器ではその硬質な鱗に傷ひとつつけられやしない。
なによりもドラゴンは膨大な
過ぎたるは猶及ばざるが如し。
他の生物にとってドラゴンの濃すぎる
「命あっての物種だ! さっさとずらかろうぜ!」
先輩女子が走りながら連絡用の
「隊長ぉ! 聞いてた話と違うって! 濃度が70%超えてるんですけどぉ! この廃墟に必要なのはアタシら浄化隊じゃなくて竜滅隊っす!」
通信機から数十名の隊員からのブーイングが一斉に流れてくる。
『やりやがったな上層部の野郎どもめ! お前ら浄化作業は止めだ止めだッ!』
隊長の怒鳴り声に「ラジャ!」と先輩女子が応える。
ところが、一安心したのも束の間――――人間の匂いを嗅ぎつけたのだろう。
一頭の小型ドラゴンが廃墟の陰からヌルリと姿を現す。小型ドラゴンは「グギャギャギャギャ!」と耳障りな鳴き声を青空に響かせ二足歩行で迫って来る。
「ちくしょう! 隊長ぉ!
『ルネ! ジュノン! 逃げろォォォォォ! 全力で戻って来いッ!』
ジュノンたちは全速力で走る。だが、小型の機動力は侮れない。
「は、速い! 追いつかれちまう! しゃーない応戦する!」
先輩女子が桃髪を振り乱して急停止、素早く腰から
案の定、プシュンプシュンと
「先輩。さがっててください」
ジュノンは先輩女子を背中に隠すと、腰からミスリルブレイドを抜き放ち刃に浄化魔法を付与する。
【――――〈
銀髪青年はドラゴンに向かって疾走を開始。牙のびっしり並んだ口を大きく開く小型ドラゴン。その牙をまともに喰らえば防護スーツでもひとたまりもない。
「……だが、しょせんは直線的な攻撃にすぎない」
銀髪青年はフェイントを入れてからのスライディングで牙をあっさりと躱す。
そのまますれ違いざまに鱗の鎧をまとった首筋にミスリルブレイドを荒々しく突き立てる。
瞬間、果実でも切り分けるようにやすやすと青光りする刃が長い首筋を切り裂く。エンチャントの効果である。
ぱっくりと裂けた首筋からどす黒い血が噴き出しドラゴンは面長の顔から地面にズザザと突っ伏す。
「ひぃ!」
尻もちをつく先輩女子の眼前で陸に打ち上げられた魚のように全身をビクビクと震わせる小型ドラゴン。
ジュノンは無造作にそれに近づき、ブーツの裏で顔面を踏みつけ固定すると、がら空きの心臓にブレイドの切っ先をえぐり込む。
間もなくしてドラゴンは物言わぬ肉塊と化す。
ドラゴンの生命力は脅威的だ。心臓部にある
「た、助かったぁ……ジュノンがドラゴンを始末してくれたぜ!」
先輩女子が安堵の声を漏らすと、
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