第12話 俺は兄をざまぁする


「兄さんさすがになめすぎじゃないかな?」



 ヒルダ姉さんはおろか最弱兵士のはずのケルベーよりもはるかに遅い一撃をかわして、追撃に備える俺だったけど、いつまでもその一撃はやってこず、むしろ、ドノバンは驚愕の表情でこちらを見つめていた。



「くそ!! たまたま避けれたからって。調子に乗るな!!」

「今のが本気だったの……?」

「なっ、なめるなぁぁぁぁ!!!!」



 俺は何を恐れていたんだ? 体全体にアクセラレーションをかけているとはいえ余裕で回避しながら自問する。

 セインの記憶のドノバンはもっと大きくて強い絶対的な存在だった。そして、転生したてでは確かにそうだったのだろう。

 だけど、前世の記憶を取り戻しシグレや巨乳少女達のためにヒルダ姉さんの稽古を受けた俺にとってはもはや脅威ではない。



「そろそろ、俺から行くよ」

「くぅぅぅぅぅ!?」



 反撃とばかりに放った一撃だったが、ドノバンの剣がかろうじで受け止めてきた。やはりこの世界の男性は守備力は高いね。このまま、連続で攻撃すれば勝てそうだけど……


 俺の勝利を確信して声援を送りながら旗をふっているシグレと、余裕でしょう? とばかりにドヤ顔をしているヒルダ姉さんを見る。

 シグレがイザベラに軽んじられたのは胸のこともあるけど、俺の専属メイドだったからだ。ヒルダ姉さんがドノバンにふざけたことを言われたのは俺が舐められているからだ。

 そして、ヘスティア様の加護の力を指し示すには皆に尊敬される必要があるのだ。



「兄さん……今からあなたには無様な目にあってもらう。だけど、これまで好きなだけ俺に暴力をふるったんだ。今更文句は言わないでくれよ」

「もう、勝ったつもりか、お前は!! セインのくせにぃぃぃぃ!!」



 踏み込む足と剣を握っている両腕にアクセラレーションを三重でかける。みしみしっと嫌な音がするが、特訓の成果かかつてほどのダメージはない。



「これが……今の俺の力だ!!」

「ぐぇぇぇ」

「ドノバンさまぁぁぁぁぁ!?」



 俺の一撃に反応できなかったドノバンが血の混じった唾を吐き出しながら吹っ飛んでいき、壁にあたるとぐしゃりと嫌な音が響く。



 やばい、やりすぎた……死んでないよね?



 心配になって駆け寄るとドノバンがこちらを見て顔をひきつらせえう。



「わ、わるかった。今までわるかったからぁぁぁぁ!! だから、命だけは助けてくれぇぇぇぇぇ!!」



 そのまま剣をほっぽり出すと背を向けて情けない声を共に訓練場から逃げていった。

 フィジカルつよ!! 結構重傷だったと思うんだけどなぁ……



「は……? あのドノバン様がまけただって……?」

「セイン様ってけっこうすごいんじゃ……?」

「というかドノバンのやつあんなに偉そうにしていたのに、あっさりやられるのかよ」



 ドノバンの無様な姿に訓練場にあつまった兵士やメイドたちがざわざわとしているのが聞こえてくる。予想外のことに混乱しているのだ。



「セイン様!! さすがです。本当にお強くなられましたね」



 満面の笑みを浮かべるシグレがこっちにきて抱き着いてきた。サラシですら隠しきれない柔らかい感触に一瞬にやけそうになるもきりっとした表情を保つ。



「約束しただろ……俺は強くなるってさ」

「はい……流石セイン様です」

「うんうん、よくあの特訓を耐えましたね。お姉ちゃんは誇らしいですよ」

「お姉ちゃん……ですか?」



 腕組みをして後方姉貴ズラしながらがってきたヒルダ姉さんの言葉にキョトンとしているシグレ。

 まあ、俺もなぜ彼女が姉を名乗るかはわからないから無理もない。


 そんな風に三人で勝利の喜びをわかちあっていると一人の乱入者がやってきた。



「あ、あの……」

「うん? イザベラか。ドノバン兄さんは屋敷の方にいったよ。慰めに行ってあげれば?」

「そ、そうじゃなくてですね。私を専属メイドにしてくれませんか? シグレなんかよりもずっと役に立ちますし、あなたを満足させることができますよ」



 これまでのバカにした様子はどこにいったやら、媚びるように体を寄せようとするイザベラ。


 こいつは……ドノバン兄さんに見切りをつけて今度は俺にのりかえようっていうのか?



「イザベラさん……なにを……」


 信じられないとばかりに声をあげ、不安そうにこちらを見つめるシグレを安心させるようにほほ笑む。



「悪い……俺の専属メイドはシグレしかいないんだよ」

「ですが、そんな胸の大きい女よりも……」

「俺はそんな胸の大きくて優しい女の子のほうが、人を馬鹿にしたりすぐに寝返ろうとするお前よりも魅力的なんだよ!!」

「な……ありえない……私がそこの女に魅力で劣るというのですか? 強がっているだけですよね?」


 抱き着いて来ようとするイザベラをさっとかわして、見せつけるようにシグレを抱きしめる。こういう人間には言葉よりも態度で示した方がいいからね。

 嬉しそうなシグレと対称的にイザベラの顔が屈辱に歪む。



「ありえない……そんなメイドを選んで後悔したって遅いですからね!!」



 そういうとイザベラは悔しそうな顔をしてかけだしていった。そんな彼女を無言で見送っていると、ぎゅーーと抱きしめ返される。



「セイン様……ありがとうございます。今夜たっぷりとご奉仕させてもらいますね」



 顔を真っ赤にして耳元でささやくエロメイドは一体何をしてくれるのだろうか? ちょっとわくわくがとまらない。





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