第30話 ビークとシルヴァ

 ザガードの刺客と勘違いされて、出会った男、アッシュ。誤解がとけて、アッシュも仲間に加わった。


 シフたちは改めてザガードの情報を求めて、街を歩き回っている。


 何もかもなくなってしまい、歩く音だけが聞こえる。違和感を感じるくらい静かだった。


 その静けさは、数分後、突然、騒々しい音に変わった。


「なんだ……!?」


 クラウドが付近を見渡す。だが、何も見えない。距離は離れている。かなり大きい音が響いていたようだ。


「あっちから聞こえてきたよね?」


 ミリアは聞こえた方向を見る。


「行ってみよう」


 シフは乗り気はしなかったが、放っておくわけにもいかない。そう思って、声をかけた。嫌な予感がする。その嫌な予感が当たらないことを祈りながら、音のする方へと向かう。



 音は激しさを増していて、ドーンと爆発したような音、叫び声が聞こえてくる。


 シフの嫌な予感は当たっているかもしれない。音が近づいてくるたびに、心が痛む。


 音が聞こえてくる場所が見えてくる。そこで見た光景に、シフたちは硬直した。


 目の前に見える景色は、人々が血だらけになって倒れている。中には変わり果てた姿もあった。人間の原形をとどめていない姿も。


 思わずミリアは、手で顔を覆った。


「……ひどい……」


 シフは、今にも泣きだしそうなミリアの言葉に、そっと肩を抱きしめた。


 ギュルルルルル


 妙な音と同時に、シフとミリアに向かって突進してくる気配がした。


「ミリア、こっち!!」


 シフはミリアを抱きしめながら、地面を転がった。


「邪魔をするなら、お前たちも殺す」


 姿を現したのは、巨大な鳥の姿をしたモンスターだ。言葉を発することもできるらしい。


 巨大な鳥の姿は、プテラノドンを思い出させる。そのモンスターの名は、ビーク。ビークは物凄い勢いで、シフに近づいてくる。くちばしでシフの肩を貫こうとしている。


 シフは咄嗟にバック転をして、ビークから距離を置く。


「死ね」


 ビークはシフの背後に回ると、くちばしで背中を刺す。


 シフはすぐに振り返ると、細剣でくちばしを受け止めた。ビークのくちばしは頑丈だ。


 細剣で受け止めても、傷ひとつつかない。


 そこにもう1人、新たなモンスターがアッシュを狙っている。


 そのモンスターは、長い銀髪でアッシュの体を縛りつけた。


「な、なんだ、これは!?」


 アッシュは身動きが取れなくなっていて、銃を取り出すこともできなかった。


 長い銀髪のモンスターの名は、シルヴァ。人型の女性モンスターだ。


「良い男じゃない。私がたっぷり楽しませてあげる」


 シルヴァは銀髪で、アッシュを縛りつけたまま、顔を近づけて、頬に触れた。


「おいしそうね」


 シルヴァはぺろりと舌なめずりをした。


「ふざけんな!」


 アッシュはシルヴァの顎を頭突きした。


 縛る銀髪が緩んだ。


 その隙にアッシュはシルヴァから逃れた。


 シルヴァは頭突きを食らったものの、銀髪が緩んだだけで、ピクッともしなかった。


「今、何かしたの?」


 シルヴァは牙を見せてニヤリと笑った。

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