第7話 回復

 攻撃を受けても、大の字になったまま、不敵な笑みを浮かべ、ゆっくりと立ち上がるゼウス。そんなゼウスを見て、クラウドは睨みつける。


 異常としか言いようがない。この状態で笑みを浮かべる余裕。また、血を見ながら楽しんでいる様子、弱き人々の命を助けようとしないゼウスは、人間ではない。


 クラウドは、ゼウスの行動や表情にゾッとする。ゼウスのような奴がいなければ、もっと穏やかに人々も暮らせるだろう。だが、残念ながら、一部の人間は、ゼウスのような奴もいる。こんな奴が増えているのであれば、人間というのは、愚かな生き物だ。


「さてと……もう少し、本気でいったほうがいいかな」


 ゼウスは指をポキポキ鳴らしている。


「本気? 今まで本気ではなかったのか?」


 クラウドは大剣を握り直した。


「そうだな、今度は本気で行くぞ」


 ゼウスはニヤリと笑うと、長剣を一振りする。長剣は炎に包まれた。炎に包まれた長剣をクラウドに叩きつけた。


 大剣で長剣を振り払おうとしたが、炎に包まれ、長剣が見えない。完全に躱しきれず、クラウドは吹き飛ばされた。


 クラウドはうつ伏せで倒れ、顔を地面に打ちつけた。炎のせいだろう。服の一部が燃えている。


 起き上がろうとした瞬間をゼウスは見逃さない。更に炎に包まれた長剣を振り下ろした。


 クラウドは躱すのには間に合わず、肩から流血する。息を整えてから、立ち上がろうとするクラウドを容赦なく斬り裂こうとするゼウス。この状態では、クラウドは全く動けない。


 かなり流血しているのか、クラウドの意識は朦朧としている。朦朧としている中でも、長剣が突き刺さろうとしていることはわかっている。ただ、動けないため、万事休す。クラウドが覚悟を決めたときだった。


 吹雪が舞い、細剣を振ると共に吹雪がゼウスに襲い掛かる。


「なんだ!?」


 ゼウスは突然の吹雪と細剣で、防御することができず、身体中から血が飛び散った。


 細剣から吹雪を起こし、ゼウスを斬ったのはシフだ。


「大丈夫?」


 シフは、クラウドのそばへ寄ると、優しく声をかけた。


「あんたこそ、大丈夫なのか?」


 クラウドは目を見開いて、シフを見つめる。


「大丈夫。クラウド、ありがとう。クラウドの手当てがなければ、ダメだったかもね」


 シフは首をぐるっと回す。軽いストレッチをすると、自分の服を雑に破って、クラウドを止血した。押さえてて」


 シフの言われるままに、クラウドは布で血が出ているところを押さえる。といっても、シフの服なのだが。


「シフ、ありがとう」


 クラウドはシフにお礼をすると、なんだか不思議と笑みがこぼれる。


「お互い様だよ」


 シフはそう言うと、ゼウスのほうへ向き直った。

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