第18話 拮抗
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銃撃戦が始まり、互いに撃ち合うもエステライヒ正規軍の火力と拮抗、召喚した軽砲を有効に使えないダンジョンのフロアの中に聳え立つ、まるで要塞のような建造物を構築した『反魔王派魔獣戦線』の残党たちは、こちらを撃退するべくして全力で歓迎してくれる。
このままではキリがなく、相手の弾切れを期待するよりも前に、こちらの弾切れもあり得る為、作戦を変更しなければならない。
まず、軽砲を一度放てば爆煙と土煙で視界を遮ってしまうことで、こちらの銃撃の効果すら実質無効にしてしまう。
一方で、対砲兵戦向きの火砲を有していないであろう敵の視界を遮る煙幕代わり、あるいは牽制に役立っていることには違いない。
問題はこちらのMP(予算)であるが……うむ、相手が相手だ。
ここは禁じ手に等しい技を使う以外にない……。
『『『『……bbbbbang!!』』』』
「……全員、ガスマスクを装着しろ! ガスマスクだ!!」
「トラチヨ……あんた、ほんまにそれ、やるんやな?」
即座に察したウィラからいつもの笑顔が消え、神妙な面持ちで俺と視線を合わせ、瞬きを一つ、二つ。
銃撃戦の最中、お互いに聞き逃すまいと神妙な表情のまま顔を近付け、銃声の途切れた合間に言葉を交わす。
『『『BABABANG!!……』』』
「ああ、制圧するにはそれしかない。既に対話の道も諦めている……俺に反旗を翻した彼らが、大義名分を喪失した今となっては、振り上げた拳を下ろせない以上、用意出来るものは……華々しい最期の意地を尊重することだよ」
『『『……bbbbbang!!』』』
『『『BABABANG!!……』』』
「……わかった、あんたがそう言うならうち、なんも言わんでおく……せやけどな、催涙ガスぐらいで堪忍してやってくれへんか?」
ウィラの言うことは尤もであり、これからフロア内を制圧する為、無慈悲な毒ガス戦へ移行することを決断したものの、殺傷系の毒ガスを使う訳にはいかない。
それこそ味方へのオウンゴール、および環境汚染へと繋がることになり、また別の禍根を遺すことになりかねないからね。
「ああ、あとは俺が介錯する」
「おい、あたしも助太刀するぜ?」
「私もいく、カスガ一人だけの問題ではない」
ナギ姐、クソチビポメ柴、頼もしいね?
作戦としてはこうだ。
まず、フロア内になんらかの方法で催涙ガス、および煙幕を張ることで敵を無力化。
次は煙幕に紛れて俺とナギ姐、ヒナコの三人で突入、制圧をする流れだ。
「ほんならうちも『おいウィラ、お前は指揮を取れ』……ナギ、なんでや?」
「ウィラ、このダンジョンを攻略するにあたり、万が一全滅した場合は、最初からやり直し……だろ?」
「もし、私とカスガ、ナギさんがリスポーンしても、ウィラさんが残っていれば、ここにいる戦力で攻略は可能。パーティーメンバーの私たちもクリア扱いになる、リスクは分散するべき」
「「「それに……」」」
「……わかった、うちが知らんでもええこと、なんやろ?」
そしてなによりも、前世でもこちらでも自らの手で人に似たなにかを殺める経験……これだけはさ、知ってほしくないこと、知らなくていいことだけに、わかってくれて嬉しいよ。
俺とナギ姐、ヒナコと違い、まだウィラには陽のあたる場所にいて欲しいのだ。
それが、俺とナギ姐、ヒナコの願いでもあるからね───。
◇
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