第26話 聖女の起こした奇跡

 ハンスさんが口を開く。

「2日前、突然王都のあちこちが光り出し、その光が収まると20年前に石にされて砕かれたはずの旧王都民やローレンツ兵が呆然と突っ立っていたんだ」


「あたしらはずーっと長い間眠っていたような、そんな感じだったよ」

 と、バーバラさん。


 ハンスさんは話を続ける。

「屋敷のバルコニーから王都の様子を見ていた俺は、何事かと思いフォーリア城へ急いだ。すると、城門でフォーリア兵に止められていたガルディウスご夫妻を発見したんだ。そしてお互いに情報を共有しあっていると、すぐに元気なフォーリア国王陛下が城からいらっしゃった」


「やはり病気ではなかったのだな」

 と、オスカー。ハンスさんはうなずく。


「そう、王妃殿下もいらっしゃって、石になっていたのに急に元に戻ったと教えてくださり、国王陛下から呪いの話を聞いたんだ」


「国王さま……ユカリのこと怒ってた?」

 そう言うユカリに対し、ハンスさんは首を大きく横に振った。


「君の……ユカリのおかげだ、と。すぐに連れ戻しに行きたいとそうおっしゃって、小隊を編成なされた。国王陛下と王妃殿下も自らご参加なされて、俺もその小隊に同行してロレリアの森の聖域へ出向いたんだ。だが小屋には誰もおらず、もしかしてと思ってこの孤島に来てみたんだ」


「あらら、すれ違いになっちゃいましたね」

 と、エド。

「国王さまはなんで来なかったの?」

 と、ユカリ。


「それは、国王陛下はバルド宰相とドム王子を断罪すべく動いておられるからだ。ユカリ、君が本島に戻った時に心の底から笑えるよう、国王様は頑張って下さっているのだよ」

 ハンスさんがそう答えると、ユカリは嬉しそうにはにかんだ。


 ここで、いがみ合っていたノエルとレベッカが話し合いの席へ合流する。

 そこで話題は彼らへと移り、レベッカは20年前当時の男爵家の令嬢で、ノエルの許嫁いいなずけであったらしい。

 当時はノエルが8歳、レベッカが15歳で7歳も年上の姉さん女房であったが、今はノエルが28歳にレベッカが15歳のままで、オスカー曰くめちゃくちゃ面白い状況らしい。


⸺⸺


 それからこちらサイドの話も彼らに共有した。


 そして今は近隣諸国の権力者をフォーリア城へ招いて緊急の会議を開いているとのことで、私たちも全員で本島へ行き、フォーリア国王のサポートをすることとなった。


 ちなみにバルド宰相とドム王子は緊急で捕えて鎖で拘束された状態で会議に参加しているらしい。


⸺⸺


 私たちの乗った魔導船が王都の港へ到着すると、港ではたくさん人たちが私たちの帰りを待ってくれていた。

 20年前に石になった人が戻してくれたことを感謝するものであったり、国の英雄オスカーの凱旋を称えるものであったりと様々であった。


 その港の花道を抜けて王都に入っても、お祭り騒ぎなことに変わりはなかった。


 私は初めて歩く王都の風景を堪能しながら、召喚された地、フォーリア城へと戻ってきたのである。


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