王妃候補として召喚された失敗作の私は、呪われた騎士団長様に連れられてチートスキルで愛の城を築きます

るあか

第1話 王妃候補の召喚

 昔から病弱だった。


 ずっと病院のベッドで過ごしてきて、毎日の楽しみは恋愛小説を読むことと、ブロックを積み上げてサバイバルをするゲームをすること。


 恋愛小説は未だ未経験の恋を想像してキュンキュンするし、サバイバルゲームは好きなように土地を開拓できて夢がある。



 そんな私も18歳を迎えた途端、病態が急変して今、息を引き取った。




⸺⸺⸺


⸺⸺




 はずなのに。


「こ、ここは……?」


 どこか地下室のような場所で、何かの魔法陣のようなマークが刻まれた床で、私は目を覚ました。



「おぉ、王子、召喚に成功致しましたぞ!」

「ほぅ、なかなか可愛い子じゃないか」

 隣のおじさんに王子と呼ばれた男性は私を見てニヤニヤしている。


「あの……えっと……」

 私が戸惑っていると、王子は私の前で片膝をつき、私のあごをグッと持ち上げた。


「喜べ女。お前は私が王位を継いだ際の王妃候補として召喚された。顔は合格だ。後はどんな有能なスキルを持っているか、夜の相手はどうか……だな」


 王子はそう言って私の顎を解放すると、部屋の隅にあった階段を上がっていってしまった。


 今度は王子の隣にいたおじさんが私に話しかけてくる。

「お嬢さん、さ、こちらへ。綺麗なお召し物を用意しておりますので」

「は、はい……」


 とりあえずこんなところでじっとしていてもしょうがないので、私は立ち上がっておじさんについていくことにした。



 あれ? 私歩けてる。

 良く分からないけど召喚されて健康になったのかな?



 カビ臭い地下室から階段を上がると重厚な扉があり、その先は漫画やアニメでしか見たことのなかったお城の中だった。


 廊下を歩いてすぐの部屋へ案内されると何人もの女性の召使いが待ち構えていて、あれよあれよとふわふわのドレスを着せられる。


 姿見に映った自分は別人の顔になっていて、とても可愛かった。

 金のストレートロングに長いまつげにくりくりのエメラルドグリーンの瞳。小さな顔に白い肌。

 こんなにもお人形さんの様な可愛い子に転生して召喚されたんだ。しかも王妃候補として。


 どんどんと綺麗におめかしされていく可愛い自分の姿を見て、私は心が少し踊っていた。


「お嬢様こちらへ、王子がお待ちです」

「はい」


 すっかりどこかのお姫様となった私は、召使いについていき、玉座の間へと移動する。


⸺⸺玉座の間⸺⸺


「おぉ、なかなかいいぞ! 先程もあれはあれで可愛かったが、今はもっと綺麗になった! これでこそ我が王妃に相応ふさわしい」

 さっきの王子が玉座に腰掛けそう出迎えてくれる。


「お嬢さん、お名前は?」

 さっきのおじさんがそう尋ねるので、私が答えようと口を開きかけると、王子がそれを制した。


「名前などどうだっていい。私が貴様に相応しい名を与えてやろう。そうだな……貴様は今日から“エリザベス”だ。よく覚えておくがいい」


「は、はい……」

 

 私とおじさんが戸惑っていると、立派な鎧をつけた騎士が玉座の間へと駆け込んでくる。


「ドム王子! 緊急事態につきお取り込み中失礼致します!」

 その騎士は玉座の間へと入るとサッと片膝をついた。


「ローレンツ騎士団長か。私は今忙しい。手短に言え」


「はっ、西のナーサ村が魔物の襲撃を受けているとのことで救出に向かいたく、出撃の許可をいただけませんか」


 ローレンツ騎士団長がそう言うと、ドム王子はすごく嫌そうな顔をした。


「そんなくだらないこと後でいいだろ」


「く、くだらない……ですか?」

 ローレンツ騎士団長はパッと顔を上げて驚いた表情でドム王子を見る。


 すると私は自然とローレンツ騎士団長と目が合い、そのイケメンな顔立ちに一目惚れをしてしまい、顔が熱くなるのを感じた。

 短い茶髪に整った大人の色気。私は熱を持ったままぽーっと見惚れてしまっていた。


 そんな私の表情を見てか、ローレンツ騎士団長様は少し顔を赤らめながらサッと視線を逸らした。

 しまった。見惚れてたのバレちゃったかも……。



「そんなことよりローレンツよ。見てくれ。さっき召喚した将来の王妃候補だ。麗しいだろう? エリザベスだ。お前は男だからな、あんまり近寄らないでくれ」

 ドム王子は自慢気に言う。


「召喚……ですか……。エリザベス姫様……わたしくめはこの“フォーリア王国”直属の騎士団長、オスカー・ローレンツにございます。以後、お見知りおきを」


「よろしくお願いします……」


 この時私は、この彼と二人三脚で歩んでいくことになるなんて夢にも思っていなかった。

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