第084話 傍から見るとうざいし、痛い


 翌日、いつもの4時に起きた俺は適当に過ごしていき、9時半になったので準備をし、ゲートをくぐった。

 そして、寮を出ると、丘を降りていく。

 すると、男子寮と女子寮の分岐点で運動着姿でポニテにしているシャルがすでに待っていた。


「おはー。運動着で来たんだ?」


 俺も運動着だが、シャルは制服だと思っていた。


「おはよう。掃除でしょ? 手伝うわよ」


 地下を見たいって言ったし、掃除をする気はないのかと思っていた。


「掃除する仕事の人は?」

「クロエは家の掃除。というか、私の研究室の掃除ね。人を呼ぶんだったら片付けるって言って、朝からやってる」


 さすがはメイドさんだ。

 どのくらいのレベルで汚いのかはわからないが、確かに綺麗な方が良い。


「まあ、楽しみにしとく」

「うん……嫌だったら別にいいわよ? 昨日の夜、クロエにないわーって言われたし」


 首をすげー横に振ってたしな。


「いや、見たい。どんなものか気になる。錬金術の授業は俺も受けてるけど、さっぱりわからないから実演を見たい」

「そ、そう? じゃあ、見せてあげる! あ、行きましょう。実はさっきジョアン先輩が通っていたのよ」


 はよ言え。


「行こう」


 俺達は丘を降りていき、D校舎に向かう。

 すると、シャルが言うように掲示板の前にはジョアン先輩が立って待っていた。


「先輩、おはようございます」

「はい、おはよう……やっぱりか」


 ジョアン先輩がシャルを見る。


「やっぱりと言いますと?」

「そんな格好したシャルリーヌさんがあそこで待っていれば想像がつくわよ」


 ジョアン先輩が呆れた。


「シャルが地下を見てみたいと言うもんで。ついでに掃除の手伝いもしてくれるようです」

「まあ、良いんじゃない? 人が多い方が早く済むしね」

「アンディ先輩は?」

「まだ……って来たわ」


 ジョアン先輩が俺達の後ろを見たので振り向くとアンディ先輩がやってきていた。


「おはようございます」

「おはよう、ツカサ君……あれ? シャルリーヌさん?」


 アンディ先輩がシャルを見る。


「彼氏さんのお手伝いだそうよ」

「違います」


 シャルが初めてしゃべった。


「えーっと、掃除を手伝ってくれる感じ?」


 アンディ先輩が聞いてくる。


「ええ。そんな感じです」

「そ、そう……まあいいか。ジョアン、揃ったし、行く?」

「そうね。行きましょうか」


 俺達は4人で校舎の中に入った。

 そして、アンディ先輩とジョアン先輩が並んで歩き、その後ろに俺とシャルが並んで歩く。


「……シャル、あからさまに無表情になって、口数が減るな」


 声量を落として声をかける。


「……どういう顔をすればいいかを考えていなかった」


 そんな気はした。


「……派閥とか色々あると思うが、まずもって先輩だぞ。挨拶くらいしろよ」

「……そうね。確かにそうだわ。そこは大失敗」


 この子、こんなに不器用で大丈夫かね?


 俺達が小声で話をしていると、木曜に来た部屋の前に来た。

 そして、ジョアン先輩が鍵を開けたので中に入る。

 そこにはこの前と同じ不気味な階段があった。


「本当に地下ね……」


 シャルが階段を見て、つぶやく。


「な? イヴェールの研究成果もあるのかね?」

「うーん、ウチは武家だからね。多分、あってもそんなにないんじゃないかな。むしろ……」


 シャルが俺をじーっと見てきた。

 ラ・フォルジュの方が多いという意味だろう。


「アンディ、なんかすごい嫌な空気じゃない?」

「うーん……ノーコメント」


 2人が俺達をチラッと見て、顔を見合わせる。


「何ですか?」

「いーえ。行くわよ」


 ジョアン先輩がライトの魔法を使い、明るくすると、アンディ先輩と階段を降りていったので俺とシャルも続く。


「シャル、足元に気を付けろよ」

「そこまで鈍くないわよ」


 いやー、どうだろう?


「アンディ、まだノーコメント?」

「……ノーコメントで」


 前の2人は何を話しているんだ?


 俺達はそのまま階段を降り終えると、通路を歩いていく。


「おばけが出そうね」


 確かに地下だし、不気味だ。


「怖いん?」

「そんなわけないでしょう?」


 怖いんだな。

 おばけが出そうなんてことを言う奴は怖いに決まっている。

 ソースはホラーが苦手なトウコ。


「アンディ」

「……嫌な空気だね」


 前の2人はマジで何なん?


 ちょっと気になりながらも歩いていくと、木曜に来た扉の前にやってきた。


「先輩、例の道具はできたんですか?」


 ジョアン先輩が扉を新しくするアイテムを作ってきてくれるはずだ。


「あー、それね。昨日、先生にその話をしたら先生が錆び取りの道具を持ってた。それを使うからちょっと待ってて」


 ジョアン先輩がスポイトみたいなものを取りだすと、扉のドアノブやサッシに塗っていく。


「すんげー肩透かし。とんでもないアイテムが見れると思ったのに」

「また今度見せてあげるわよ…………っていうか、後輩がやりなさいよ」


 ジョアン先輩がそう言ってスポイトを渡してきたので交代して塗っていく。


「これ、魔法ですか? なんかテレビで見たことある気がするんですけど……油じゃね?」

「あっちの世界の錆び取り剤よりも強力なのよ」

「そっすか……」


 魔法でばーんを期待していたんだがなー……


 俺はその後も塗っていき、ある程度塗り終えると、ドアノブを回してみる。

 すると、何の引っ掛かりもなく、スムーズにドアノブが回った。


「こんなもんだと思います」

「よし、じゃあ、頑張ってくれた後輩には一番最初に未知の部屋に入る権利をあげましょう」


 俺が開けていいらしい。


「はーい」


 俺はスポイトをジョアン先輩に返すと、ドアノブを握り、扉を引く。

 すると、扉が開いたので中に入った。

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