第1話 目覚め
陽一はその朝、いつものように目覚まし時計に起こされた。しかし、今日の彼は何かが違っていた。公園での老人の言葉が彼の心に残り、ただ日常を過ごすだけの人生に疑問を投げかけていた。
彼の部屋は小さく、生活のための最小限の物だけがそろっている。壁にはかつての彼が参加した障害者支援のイベントのポスターが貼られていた。それを見つめながら、彼は自分がこれまでどれだけ他人の視線を意識して生きてきたかを思い知った。
「自分が本当に望む生活って何だろう?」陽一は自問自答する。そんな彼の元に、学生時代の友人である真希から連絡が入る。真希はメディア業界で働いており、陽一の生き様をドキュメンタリーとして取り上げたいと提案してきた。
彼女の言葉は魅力的だったが、陽一は躊躇した。メディアに自分の人生を晒すことで、また他人のフィルターを通して見られるのは嫌だった。しかし、これを機に社会に対するメッセージを発信できるかもしれないという希望もあった。
「やる価値はあるのかな?」彼は深く考え込む。
その夜、陽一は久しぶりに外へ出て、近くのカフェで一人コーヒーを飲みながら考えを巡らせた。カフェの隅には様々な人々がいて、彼らの笑顔や会話が、何かを変えるための活力となった。
「もしかしたら、真希の提案を受けることで、俺自身が変わるチャンスかもしれない。」
決心がついた陽一は、真希に連絡を取り、プロジェクトの参加を正式に承諾した。彼は自分のストーリーを通じて、障害に対する社会の誤解を解く手助けができるかもしれないと感じていた。
この決定が彼の新しい一歩となる。彼は自分だけの真実を求め、周囲がどう見ているかではなく、どうあるべきかを問い続ける旅を始めた。それはただのドキュメンタリーではなく、彼の人生そのものが一つのメッセージとなることを、陽一はまだ知らない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます