C1-2 多田進の説明書
多田
2つ上の兄に憧れて小学校から中学の途中までは野球部に入っていたが、ベンチにいる時の方が多かった。その後、自分の才能は頭脳にあると考え勉強に集中する。しかし、妹には全くかなわない。
平均以上の学力はあった。思考力やひらめきが優れていると褒められたこともある。しかし、妹は2つ下にもかかわらず、同じ模試だろうがなんだろうが、常に偏差値70超えの1位。格が全く違った。
ーー大丈夫、進はきっと特別になれる
それは大好きな祖母がいつも言っていた言葉だ。両親にあまり構ってもらえない進は、祖母と一緒にいることが多かった。『進はきっと特別になれる』その言葉には愛情が込められていたのだろうが、今となっては呪いになってしまった。
そのせいで、進はプロゲーマーやら動画配信者やら歌い手やら・・・・・・流行りのものに何でも手を出しては失敗を繰り返した。そんな彼を両親も見ていられなかったのか、父の会社にコネで入社するよう勧められる。最低でもどこかの国立大学は合格してこい、それならコネ入社でも文句は言われない、と。人生に疲弊し切っていた彼は傀儡のように従い、地元の国立大学を受験した。結果は不合格だった。
「そんな意味のない人生を送っていたはずだったのにな・・・・・・」
ある日彼は異世界に飛ばされた。木造の小屋の中、見知らぬベッドの上で目を覚ます。わずかに香る漂う気持ちの悪い甘い匂い。熱い体温と、カラカラの喉。切断された左手から響き続ける痛み。過去最悪の気分で目覚めると同時に理解する。自分はまだ、家には帰っていないのだと。
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