第9話  イアンと最高金貨

 次の日に、ロアンのところに光の神殿から、最高金貨が、50枚届けられた。(五百万円相当)


 見たことない大金に目の眩んだロアンであるが、これを運んで来たのは、ロアンの七歳違いの兄、イアンであった。Aランクの魔法使いでありながら、西域の小さな町の片隅で人々の生活を助ける『何でも屋』を営み、魔法使いとして、細々と暮らしていたのだ。


 今回、娘に与えられた大仕事にあたって、サボり癖のあるロアンの見張り役に抜擢推されたのが、気が弱くて気真面目なイアンだったのである。


 生真面目なイアンは、家族には新年のあいさつ等は欠かしていなかったので、直ぐに居場所は知れた。


 直ぐに帰還命令を出し、銀の森から送られてきた最高金貨五百枚をイアンに渡すと、こう言った。


「これは、光の神殿に奉納するための剣を作るために、神殿が用意したお金だ。これで材料を揃えて、必要なものをそろえよ」


 イアンは、谷長の爺に伝言を頼まれた。


「勘弁してくれよ~~」


 イアンも頭を抱えていた。

 Aランクの腕がありながら、下町の「何でも屋」の方が、気が楽である。

(しかも、SSSランクをもらった妹の監視だって?? あの奔放に育ったロアの監視?)


あんちゃん!!」


「ロア、お前も大変だな~~ オレも巻き込まれて……なんと言って良いやら……」


 ロアンと同じ薄茶の髪と、茶水晶のイアンが言って、懐から最高金貨の入った袋を取り出した。


「見たこともない、最高金貨だ~~」


「こら、よだれを垂らすな! ああ……勝手に数えるんじゃない!!ちゃんと五百枚あるはずだ!」


あんちゃん、ここへ来る時に家へ寄ったでしょ?」


「もちろん。じい様や父上には、挨拶をしに行ったが?」


「じゃあ、じじいどもに二~三枚くすねられてるぞ……」


 ロアンは、最高金貨の入った袋を空に投げると、風の精霊に命じて一枚ずつ数え直して再び入れた。結果、三枚向き取られていたことが判明し、ロアンは、夕食を狙って、実家に帰り爺にしこたま酒を飲ませて酔わせた。そして、爺の内ポケットに隠してあった、最高金貨の奪還に成功したのだ。  


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る