⓹ 過去からの手紙《返信》菊池 武光➠母上
母上へ
どうやら、俺は『令和』という時代に、たどり着いてしまったらしい。
俺は博多の合戦の
こちらの言葉では、たいむすりっぷと呼ぶようだ。
信じられないことであろう? でもそれが現実に起こってしまったようだ。
たいむすりっぷして大いに戸惑った。
ここには
福岡市には、筑前国では見ないような、髪の毛が黄金の者、天狗の如く鼻が高い者、明らかに大和言葉とは異なる言葉を話す者が多くいるような、俺の知らない世界がそこにはあったのだ。
一方、こちらの世界には弓矢を携えている者も、馬に騎乗している者もいない。武術に長けていても役に立たず、神への信仰心もなじまない。むしろ、神への強すぎる忠誠心は時に人を遠ざけ、武力による解決は刑罰を科される行為となる。
代わりに、でんきと呼ばれる雷に似た力で、夜なのに町は煌々と光り輝き、馬車ではなくじどうしゃやでんしゃと呼ばれる移動手段で、数日で千里の距離を駆け抜ける文明を築いていたのだ。
そして、神頼みなどせず、すまほと呼ばれる、
何から何まで、勝手が違うのだ。
しかしながら、
しかし、必ずや筑前国に戻り、父上や兄上の仇を取り、母上を助ける。
人間や手紙が、たいむすりっぷするのなら、必ず時代間を行き来する扉があるはずだ。
俺は、令和の文明を持ち帰り、菊池を、そして九州を、必ずや繁栄させてみせます。
それが、俺に課せられた使命だと思って。
菊池 武光
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