第17話 畑
島根に来てから二週間が経った。
引っ越しの荷物を整理し終わって、住所変更など行政の手続きなども一段落したところだった。
最初は島根観光だ、出雲大社だ、なんて浮かれてしまった面もあった。オレの悪い癖だ。今は真奈美のご両親もにこにこしながらオレに接してくれいるけど、雲行きが怪しくなる前に真面目に仕事を探さないと、と自分を奮い立たせた。
真奈美は、引っ越し疲れで、体調が安定しないのでしばらくはゆっくりすると言っていた。家の隣にある小屋が空いているので、そこを陶芸スペースにするらしい。教室を引き上げてきた時の大量の荷物を片付けて、ゆくゆくはそこで作品を作って販売していきたいと話していた。
真奈美はやっぱりしっかりしている。自分のやりたい事がブレてなくて、それが仕事になっているんだから。
それに比べてオレはどうだろう。仕事探しはかなり難航していた。
「楓。そんなに焦らなくてもいいよ」
家から通えそうな会社の正社員の募集に手当たり次第履歴書を送り、面接も受けに行ったが、既に十社ぐらいは落とされていた。
「うん。分かってる。あーあ。オレにはやっぱり畑しかないかなー」
「楓はいつも畑を最終手段みたいに言ってるけど、畑って肉体労働で知識もいるし、結構大変なんだからね」
わかってるってば。ベランダの家庭菜園も失敗したもんなぁ……
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