【008】もしかして、やりたい仕事があった?

そんな様子を見たショウは、気まずそうに髪を掻きながら声をかける。


「ごめんごめん、なんでもない!急いでいる様子だったからアルバイト部かな?って思って」


「は、はい。そうです……」


「そっか。今たくさん人が集まっているから、時間を置いてから向かったほうが良いかも」


「……そうですか、そうですよね……」と彼女はますます肩を落とす。


親切心で言ったつもりが、さらに落ち込ませたと慌てたショウは話を続ける。


「もしかして、やりたい仕事があった?」


「えっと……あるにはあるというか……」


引っかかりのある返事に、事情が気になってしまうショウ


「……へぇ、ちなみにどんな仕事?」


「えっと……えっと……」


「ごめん!もし言いづらいなら良いや、詮索して申し訳ない」


「あ……特別な意図はなくて。『私にできる仕事』なら何でもやらないといけないので」


「……なるどねー!」


(ずいぶん謙虚な人だな)


一向に気分が下がっていく彼女に、ショウは思い切ってある提案する。


「ねえ?もし良かったら一緒に、俺が申請した仕事へ行かない?」


「え?あの……一人用の依頼だったら、私が行くと報酬が減ってしまうんじゃ……」


「俺は大丈夫!報酬は減るけど、二人で作業分担できて楽だし、誰かと話しながらの方が楽しいから」


突然の提案に戸惑いの表情を浮かべ、顔を伏せてしまう彼女。


だけど慌てている訳ではなく、考えている様子に見えたショウ。


グラウンドに視線を移し、彼女からの返事をゆっくり待つことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る