第47話 暗闇の中の迷路

涼子は「虚無堂」で一風変わったイベント「暗闇の中の迷路」を企画した。このイベントでは、参加者が完全な暗闇の中で、触感と聴覚を頼りに迷路を解く挑戦を体験し、日常とは異なる環境での方向感覚と問題解決能力を試すことを目的としていた。


イベントの準備として、涼子は虚無堂の一室を使い、部屋全体に複雑な迷路を設計した。迷路は触れることができる柔らかい壁やロープで構成され、参加者が安全に探索できるように配慮されていた。また、迷路の特定のポイントには音が出るデバイスを配置し、音のヒントを使って迷路を進む手助けをした。


参加者たちは一人ずつ、目隠しをされて迷路の入り口に案内された。涼子は参加者に、暗闇の中で静かに自分の感覚に集中し、壁を手で触りながら進むことを説明した。迷路は複数のルートが設けられており、間違った道を選ぶと、穏やかな音楽が流れるデッドエンドに導かれる設計となっていた。


迷路の中で参加者たちは、完全な暗闇と静寂の中、自分の感覚に深く依存しながら進むことに集中した。触感と音のヒントを頼りに進む中で、参加者は通常の生活では意識しない感覚に気付き、自分の身体や空間認識能力に新たな洞察を得た。


体験の途中、涼子は適宜、迷路の中で静かにガイダンスを提供し、参加者が行き詰まった時には助けの手を差し伸べた。この協力的なアプローチは、参加者に安心感を与え、チャレンジを楽しむことを助けた。


迷路を抜け出した参加者たちは、涼子によって明るい場所へと導かれ、一人ずつ目隠しを外された。参加者たちは体験を通じて得た感覚や、迷路を解く過程での感情を共有し、多くの人が「暗闇の中で迷路を解く体験は、自己信頼と感覚の鋭敏化を促す貴重な機会だった」と感想を述べた。


涼子はこの「暗闇の中の迷路」イベントが参加者に与えた独自の体験と感覚の発見に満足し、参加者たちが日常生活での困難に立ち向かう際にも、この体験が役立つことを願っていた。そして、虚無堂でのさらなる革新的なイベントを企画する意欲を新たにした。

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