前のエピソード――第40話　暗闇の中の映画鑑賞

涼子は「虚無堂」での新しいイベントとして「暗闇の中のサイレントディナー」を企画した。このイベントは、参加者が完全な暗闇と静寂の中で食事をすることにより、食材の味や食感をより深く感じ取り、食べる行為の新たな意識を高める体験を提供することを目的としていた。

イベントの準備として、涼子は虚無堂のダイニングルームを使用し、窓を厚いカーテンで覆い、照明をすべて消して完全な暗闇を作り出した。テーブルには触感で区別できるさまざまな食器を配置し、食事は手で食べやすい形状に工夫された。

参加者たちは一人ずつ静かに部屋に案内され、事前に席が指示された場所に着席した。涼子は、このディナー中は会話を控えるよう参加者に促し、食事に集中するためのサイレントディナーのルールを説明した。

暗闇の中でディナーが始まると、参加者たちは自分の前に配された様々な料理を静かに探り、食べ始めた。視覚が遮断されることで、食材の香りや味、食感が通常よりも強調され、食事の体験がより豊かなものとなった。

ディナーには様々な料理が用意されており、柔らかなパン、クリーミーなスープ、サクサクした野菜のサラダ、香ばしい焼き魚など、食感と味わいが異なるものがバランス良く配されていた。暗闇の中で食べることにより、参加者たちはそれぞれの料理を一つ一つ丁寧に味わい、普段は気付かないような微妙な味の違いに気づくことができた。

ディナーが終わり、涼子は徐々に部屋の明かりをつけて参加者たちを現実に戻した。その後、参加者たちはディナーの体験について話し合い、多くの人が「暗闇の中での食事は、食材一つ一つの味を深く感じることができ、普段は見過ごしてしまう食の楽しさを再発見できた」と感想を述べた。

涼子はこの「暗闇の中のサイレントディナー」が参加者に与えた食への新たな認識と感謝の気持ちに満足し、食事の本質を再考するきっかけを提供できたことに喜びを感じた。そして、虚無堂でのさらなるイベントを通じて、日常生活の様々な側面に新しい光を当て続けることを決意した。