第33話 暗闇の中の時計店
涼子は「虚無堂」での新たな体験企画として「暗闇の中の時計店」を思いついた。このイベントでは、参加者たちが暗闇の中で時計のさまざまな音に耳を傾け、それぞれの時計が刻む時間の感じ方を探究することを目的としていた。
イベントの準備として、涼子は虚無堂の一室を使い、古い振り子時計、機械式の腕時計、デジタル時計など、さまざまなタイプの時計を集めた。これらの時計は部屋の隅々に配置され、それぞれが独特の音を奏でるようにセットされた。
参加者たちは一人ずつ部屋に入り、完全な暗闇の中、涼子の案内に従い静かに座った。部屋には時計の音だけが満ちており、それぞれの時計が刻む「カチカチ」「チクタク」「ビープ」といった音が、異なるリズムとテンポで響き渡った。
涼子は参加者たちに、目を閉じて深呼吸をし、暗闇の中で時計の音に集中するように促した。彼女はさらに、音に心を傾けることで時間の流れをどのように感じるか、またそれが心や体にどのように作用するかを考えてみるように提案した。
参加者たちは暗闇の中で時計の音に耳を澄ませ、時間が生み出すリズムに身を委ねた。振り子時計のゆったりとした動きから発する音は、落ち着いた安心感を与え、一方で機械式の腕時計の規則正しい音は、緊張感を少しほぐすような効果を持っていた。デジタル時計のピッピッという音は、現代の時間感覚を思い起こさせるものだった。
イベントが終わる頃、涼子はゆっくりと部屋の灯りを点け、参加者たちを現実に戻した。彼女は皆に感想を尋ね、多くの人が「暗闇の中で時計の音に集中することで、時間の流れをより意識的に感じ取ることができた」と共有した。また、ある参加者は「時計の音が心にもたらす影響は思った以上に大きく、リラクゼーションにも瞑想にも使えそうだ」と感じた。
涼子はこの「暗闇の中の時計店」が参加者に与えた洞察と新しい時間の体験に満足し、さらに多様な感覚を探究するイベントを企画する意欲を新たにした。この体験が、参加者たちの日常生活における時間の感じ方に新たな影響を与えたことを願いながら、彼女は次のイベントに向けての準備を始めた。
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