第30話 暗闇の中の約束

涼子は「虚無堂」で新たなイベント「暗闇の中の約束」を企画した。このイベントは、参加者たちに暗闇の中で自らとの約束を新たにする機会を提供することを目的としていた。特に、年末に近づくこの時期に、自己反省と新たな目標設定のための静かな空間を作り出すことを意図していた。


イベントの準備として、涼子は虚無堂の一室を使い、全ての光を遮る厚いカーテンで窓を完全に覆った。部屋の中央には小さなテーブルを設置し、その上には各参加者が自らの約束を書き留めるための紙と筆記用具が配された。


参加者たちは一人ずつ部屋に入り、それぞれがテーブルの周りに静かに座った。涼子は彼らに深呼吸をし、目を閉じ、一年の自分の行動を振り返るように促した。そして、暗闇の中で心に浮かぶ思いや反省点、来年に向けた希望や目標を紙に書き留める時間を持たせた。


部屋は完全な暗闇に包まれ、ただペンが紙に触れる音だけが響いた。参加者たちはそれぞれの心の中で自分自身と向き合い、内省の深さを増していった。涼子自身も参加し、自らの約束を新たにすることで、来る年への期待と準備の重要性を改めて感じた。


書き終えた後、涼子はゆっくりと部屋の灯りを点け、参加者たちに静かに目を開けるように促した。彼らは一人ずつ、自分の約束を読み上げることを選択した。声に出すことで、その約束がより具体的で実現可能なものへと変わり、他の参加者と共有することで相互のサポートと理解が深まった。


このイベントを通じて、参加者たちは新たな年を迎えるにあたって、自分自身に対する誠実さを再確認し、具体的な目標や改善点を設定することができた。涼子は、この「暗闇の中の約束」が参加者にとって有意義な自己反省の機会となり、新しい一年への準備を助けることができたことに満足感を覚えた。


この夜は、参加者たちにとって自己との対話を深め、互いに支え合う約束の場となり、虚無堂での体験の重要性を再確認する機会となった。

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