第28話 暗闇の中の仮面舞踏会

涼子は「虚無堂」での次なるイベントとして「暗闇の中の仮面舞踏会」を企画した。このイベントは、参加者が暗闇の中で仮面をつけて舞踏会に参加するというもので、仮面の匿名性と暗闇がもたらす神秘性を融合させることで、普段とは異なる自由な自己表現を促すことを目的としていた。


イベントの準備として、涼子は虚無堂の広間を使い、周囲を完全に暗くするための特別なカーテンを設置し、中央には小さなダンスフロアを作った。床には触れるとわずかに光る特殊な素材を用い、参加者が完全な暗闇の中でも自分の位置をある程度感じ取れるよう工夫されていた。


参加者たちは仮面と装飾された衣装を着て、一人ずつ虚無堂に入場した。涼子は、暗闇の中での舞踏会のルールとして、声を潜めて自己紹介をする代わりに、身振り手振りでコミュニケーションを取るよう案内した。これにより、参加者は見た目や声に頼ることなく、他の人々との新しい形の交流を楽しむことができた。


音楽は、エキゾチックで幻想的なメロディが中心で、暗闇と仮面の雰囲気を高めるよう選ばれていた。ダンスが始まると、参加者たちは徐々に音楽に身を任せ、暗闇の中で互いにパートナーを変えながら踊り続けた。仮面と暗闇が生み出す匿名性が、普段は試すことのない大胆なダンスステップや表現を引き出していた。


涼子自身も仮面をつけて参加し、参加者たちと一緒にダンスフロアを舞った。彼女は、参加者が自由に表現し、互いに新たな結びつきを感じる様子を見て、このイベントの意義を強く感じた。


舞踏会の終わりには、涼子は参加者たちを集め、暗闇の中で感じた経験について話し合う時間を設けた。多くの人が「仮面と暗闇がもたらす自由が、新しい自分を発見する機会をくれた」と感想を述べ、普段では気付かない自己の一面を探求できたことに感謝していた。


この夜は、参加者にとって単なる舞踏会ではなく、自己発見と新たな人間関係を築くための特別な場となり、涼子は「虚無堂」で提供する体験の多様性と深さを再確認した。暗闇の中の仮面舞踏会は、参加者たちに忘れがたい夜を提供し、彼らの記憶に新たな魔法の章を加えた。

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