第3話 神の使徒
間接的ではあるが両親に出会えたクレアは、怒りと嬉しさが混じった形容し難い感情に陥る。
しかし、複雑な感情は異常な状況によって薄められる。
父親の顏が若いことから、両親の過去に居合わせていることは把握している。
だが、母親のサンタナの身体に憑依した理由と、どのようにして両親の過去に居合わせているのか見当がつかない。
状況把握に行き詰ったクレアは、一呼吸おいて過去に飛ばされる前の行動を振り返ることにした。
すると、あることに気付く。
『過去に飛ぶ前、ギルダンさんから渡されたお母さんの遺品に……! もしかしてカセットテープに触れたから?』
過去に飛ばされた原因をカセットテープに触れたことだと考察していると、突然テラスの天井付近に大きな眩い光が出現する。
突然の発光に一瞬驚くが、サンタナは強烈な光に手をかざしながら、好奇心に駆られゆっくりと歩み寄る。
目と鼻の先の距離まで近づくと、光は急上昇し天井にぶつかり、光の中から人影が現れる。
テラスにいた数人も目を細めながら人影を凝視している。
突然の事態にほとんどの人は口を開けてただ立ち尽くしていた――サンタナを除いて。
「あなたはいったい何者?」
『えぇっ! 嘘でしょ?』
発光体に近づくこと自体異常な行動なのにもかかわらず、サンタナは何者かもわからない人影に話しかけるという奇行に出る。
しかし、サンタナの問いかけには無反応。
だが、サンタナは諦めずに何回も人影に話しかける。
さすがのクレアも、サンタナの奇行の連発には理解が追い付かない。
人間、人界外の生物、宇宙人……、どの問いかけにも無反応な人影に苛立ちを覚えたサンタナは、最後の質問をぶつける。
「わかったわ、これが最後の質問よ。あなたは何者? 神様?」
『神様って、まさかそんなわけ……!』
クレアはサンタナの質問に呆れたかえっていると、突然人影は両腕を大きく広げ始める。
クレアは人影の能動的な行動に戸惑を隠せなかった。
ゆっくりと動く腕に連動して、後ろにあった発行体が10個に分裂して球体になり、手のひらサイズに縮小され人影の周りを回っている。
「私は###。第一次世界崩壊から人々と世界を救った神です。あなたたちは、神の使者として選ばれました」
「冗談きついわね」
ようやく口を開いた人影の一言目が、「私は神だ」という冗談にしか聞こえない話だったため、さすがのサンタナも状況を呑み込めなかった。
しかし、もし神の発現が本当で相手が神ならば、下手に断ると何をされるかわからない恐怖があったため、サンタナは言葉を選びながら慎重に心意を伺う。
「もし本当にあなたが神だったとして、私たちを使徒にする理由は何?」
「私と共にこの世界のピースフルコアを保護してほしいのです」
『「ピースフルコア?」』
クレアの疑問がサンタナの漏れた言葉に被さる。
説明を終えた神は、広げた腕を頭の上に持ち上げ手を叩くと、神を囲んで回っていた光の球体がその場にいた10人の胸部に侵入する。
「これであなたたちは私の使徒となりました」
「ちょっと、流石に勝手が過ぎるわよ」
神の身勝手な行為に腹を立たせ怒鳴るサンタナだったが、神はサンタナの怒りに1つも反応せず、再び強烈な光を発現させ、サンタナたちの視界を真っ白にさせた。
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眩い光を受け目を閉じたクレアは、恐る恐る目を開けると、目前に広がるのは真っ白な壁であった。
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