第17話 セカンドコンタクト時の電波解析(全文)
我々はこの星に昔から住んでいる者だ。
こちらとしては、早くこの星から立ち去っていただきたいが、ここまで来てしまった以上、すぐに立ち去るというのは不可能であろう。
この星に来た理由は、この星の生物の調査であろう?でなければ、わざわざ知的生命体を乗せてくるはずがない。
我々は、この星に関して、ほとんどといっていいほどのことは知っている。ご存知の通り、電波でコミュニケーションを取っているので、知らないことがある個体がいても問題ない。即座に、知っている個体と連絡を取ることができるからだ。
特に、この氷の下の海の中に関しては、全て知っている。我々は、この広い海の中にそれぞれが点在し、そこで起こることを観察している。生物単位を観察している者もいる。
もしそちらの都合がよろしければ、海中探査には我々の同胞をお供につけよう。彼に聞けば、全ての生物が観察できるし、我々が知っていることは全て教えよう。
その代わり、そちらの調査がおわれば、速やかにこの星から立ち去っていただきたい。同胞に関しては、彼の判断にお任せする。
四角い物まで解体しろとは言わん。あれがもう一度、あの飛んでいる物に収まるとは思えんのでな。すまない、我々の言語には、あれらを表す電波信号がない故、四角い物、飛んでいる物としか言えんのだ。
君らの母星では、侵略者が恐れられていると聞いたと代々伝えられているのだが、それは本当だろうか。
この星には侵略者が今までいなかった故、皆半信半疑でその話を聞いていたのだが、これで我らが自分の意思ではなく捕らえられたり、殺されたりしたら、それが侵略ということなのだろう?恐ろしいな。そんなことをされたら、あの飛んでいる物に皆で〈バシュッ〉してしまうかもしれん。
我らはこの星の外に関しては、興味を持たない。
基本的に、この星程度に冷たい海でないと、生きることが難しいので、君らの母星にも興味はない。君らの母星は、我々には明らかに暑すぎる。
なんだ、まだ電波データが不足しているか?
質問に答えるなら簡単だが、1人で発信し続けるのは難しいな。言語を教えようにも、我々は生まれる前から、ある程度の電波での意思疎通は、動くよりも簡単にできてしまう。なので、周りの大人たちと意思疎通を繰り返すことで、様々な電波信号を学んでいくのだ。
つまり、体系的に作られた、電波信号学習法……とでも言うべきようなものは、存在していないのだ。
だから、すまないが君たちも、この電波信号を解読などして、どうにか意思疎通ができるようにしてほしい。
あぁ、君たちから我々に呼びかけるための電波信号が必要になるな?いくつか教えておこう
話がしたい、教えてほしい、ここにいる、お供が欲しい、お供はいらない
話がしたい、教えてほしい、ここにいる、お供が欲しい、お供はいらない
我々に、君たちで言う耳はない。つまり、音を聞くとかいうこともできないのだ。音の波を感じることならできるのだが、それも水中でないとできないだろう。
君たちは、生身でこの星の環境に、一瞬たりとも生きることはできないのだろう?君たちの意思疎通手段をじっくり見た仲間がいたが、空気というものがないと、意思疎通ができないのではないだろうか。そういえば、そもそも、君たちは空気がないと生きられない、そう伝え聞いた記憶もあるな。
少々脱線したな。水中に音を発することができれば、我々も君たちの言語を習得することができるかもしれないが、そんなことをするよりも、君たちが、我々の電波での意思疎通に慣れる方が早いだろう。
再度言っておくが、我々は他の星に興味がない。君たちの母星に行き、何かするつもりもない。
最初に君たちが遭遇した我々の同胞は、あの飛んでいる物が電波を発していた為、それが気になり〈バシュッ〉したようだ。
驚かせてしまったな。褒められた行動ではないが、得られた情報は重要だった為、あまりその同胞も責められなかった。
何もなくても我々はたまに〈バシュッ〉するが、それは大抵珍味を食べるためだ。〈ツキマリ〉の群生は、氷の上にしか存在しない故な。〈ツキマリ〉は海中にも多く存在するが、群生するのは氷の上だけだ。〈ツキマリ〉の群生を食べると、思考がクリアになり、何もかもの作業を信じられないほどのスピードで進めることができ、肌がやや敏感になるという快感が得られ、それを忘れられない者が多いのだ。
〈バシュッ〉すると、稀にこの星の引きつける力を振り切って、どこかへ飛んでいってしまう者もいるな。その者達はいずれ、死んでしまうことになる。我々は圧力の変化には強いが、定期的に何か食べないと、酸素がなくなってしまうだろう?
まだ行かないか。そうだな……我々は、電波を自由自在に発信することができる。受け取ることもそうだ。今回は、君たちの方向だけに向けて発信しているし、近くでないと受信できないように発信することや、この星全体に向けて発信することもできる。我々は親が抱いた卵から生まれるが、1番最初にできるのは電波受信管、次に電波発信管だと言われている。卵の中から聞こえる、初めての電波は微弱で、とても愛おしいものなのだ。親は大抵、その微弱な電波を覚えていて、あまりにもありふれていたり、問題があったりしなければ、その微弱な電波信号をその子の名前にする。しかし、我々はあまり名前に執着がない。体色で呼ばれることの方が多いのでな。
お、ようやく行くか。どうかこの電波信号を解読してくれたまえ。君たちは賢い。これぐらいは容易いと信じているぞ。
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