第3話 重症化してました
「悠斗、いらっしゃい!」
綾が満面の笑みで見舞いに来た俺を出迎えた。そこには昨日のような禍々しいオーラは全くなく、天使のような明るい笑みだ。
「お、おう……久しぶりだな。」
「本当に久しぶり……二日も会えなかったよ。」
てっきりまだまだ落ち込んでいるものかと思っていたが……何だもう立ち直っているじゃないか俺の思い過ごしだったな。
ということは綾は無事俺への依存をたちきれたということか。
良かった、本当に……
長年悩んでいた問題が無事解決されて俺は心の底から安堵した。
「どうしたの? そんな泣きそうな顔してかにかあったの?」
「いや、何でもない」
「じゃあ上がって、私の部屋で話そうよ」
綾の部屋はいつもとは違ってまだ昼間なのにカーテンが閉められていた。
規則正しい綾なら朝起きた時に必ず開けるはずだがまぁ、恐らく寝ていたのだろう。
「とりあえずそこ座って」
後ろ手で部屋の鍵を閉めながら綾が言った。
「綾、明日は学校来るのか?」
「うん、明日はちゃんと行くよ」
「そうか……この間はいきなりあんな話をしてしまってすまんな、驚かせた。」
「うん……大丈夫だよ。悠斗に彼女が出来たなんて大事なことだし、早めに言ってくれてよかったよ」
どうしようか……目的は済んだし、もうあれは嘘だったと話してしまうか?
いや、数ヶ月後くらいに適当に別れたと言えばそれでいいか。
「———悠斗、そのことでね私、一つ決めたことがあるんだ。」
「ああ、応援してくれるんだろ? ありが———」
「応援? そんなこと死んでもしないよ。」
その瞬間、先程までの天使のオーラが一瞬で消え失せ、二日前のあの禍々しいオーラが蘇る。
そして黒く濁った瞳が闇のような瞳が俺をじっと捉えた。
「私が決めたのは復讐。悠斗を誑かした女にどんな目にあってもらおうかなって。」
俺は甘く見ていた……治っただろうと、そうたかを括っていた……けど実際は違ったこれはむしろ重症化している……!
座っている俺に綾がゆっくりと近づく。
逃げようにも何故か足が動かない。
綾はそんな俺の様子を満足そうに眺め俺の頬に手を触れる。
「悠斗悠斗悠斗悠斗悠斗悠斗悠斗悠斗悠斗悠斗悠斗悠斗悠斗悠斗悠斗悠斗悠斗悠斗悠斗悠斗ぉ、だぁーいすき!」
もしかしたら俺は余計なことをしてしまったのかもしれない……あのままの状態ならばここまでのことはしなかったはずだ。
全ては俺が彼女が出来たと嘘をついたばかりに……
「悠斗も私のこと愛してるでしょ? 昔結婚しようって言ってくれたの覚えてるよ? 日付もちゃんと覚えてる。」
綾は日付と正確な時刻を言って見せたが俺はそれがあっているのかすらわからない。
「悠斗、その女なんか捨てちゃお? 私の方が絶対いいから」
「いや、それは———」
「やっぱり、悠斗悪い女に洗脳されちゃってるんだね。可哀想に……私が洗脳し直してあげる」
そう言って綾は俺の唇を強引に奪った。
そして口の中に下を入れ込み俺の舌と絡め互いの唾液が絡み合い脳がとろけそうな快感だった。
「はぁぁ……長年夢見たことの一つをようやく叶えられた……初めてじゃなかったのが計算外だったけど。」
もちろん俺はキスなどしたことはない。
今のが初めてのキスだ。
「ふふ、悠斗これから覚悟してね? 私にずっぷり依存させてあげる」
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