依存体質の黒髪清楚幼馴染を自立させる為に彼女ができたと嘘をついたら更に重症化した件

ぷらぷら

第1話 黒髪清楚幼馴染

「えへへ、悠斗の隣は私のもの〜」


 俺の隣を歩く幼馴染———神室綾かむろ あやが腕に抱きつきながら幸せそうな声でそう呟いた。


 手入れが行き届いた長い黒髪。


 慈愛に満ちた優しい黒目。


 絹のように白くスベスベな肌。

 

 女子の理想のような肢体。


 アイドルや芸能人にも負けない———いや、それ以上の容姿を持つ綾は当然学校では男女ともに人気が高く、皆の憧れの的のような存在だ。


 当然男子からは好意を持たれることが多く、今まで数々の男子が綾に告白しては全て玉砕されてきた。


 そんな綾が仲良くしている男子、俺———久我悠斗くが ゆうとは日々男子から怨嗟の籠った視線を送られている。


「綾、歩きずらいんだけど……」


「やだー! 帰るまでずっとこうしてるの!」


 全く……本当に学校でのイメージとは大違いだな。


 学校では成績優秀、スポーツ万能、誰にでも優しい完璧美少女だが昔から俺といる時だけはこうして子供のような一面を見せる。


 学校での姿は綾がそう見せているもので多分、こちらの綾の方が素の状態だろう。


「悠斗の側……落ち着く……」


「……そうか」


 一見完璧美少女に見える綾にも一つだけ難点がある。


 それは———綾が異常なまでに俺に依存仕切っているということだ。


 皆誰しもが何個か持っている心の支えとなる部分の一つが俺なんだろう。前に喧嘩して少し口を聞かなくなっただけでこの世の終わりみたいな顔をしていたからな。

 

 ちなみにこんな恋人みたいなことをしているが俺達は決して付き合っていない。

 

「悠斗、私達ずっと……ずっとずっとずっーと一緒にいようね?」


「……」 


「悠斗?」


 これまで何度もこのままでは良くないと思った。


 だが綾が悲しむところを見たくなくてずっと放置した結果、俺がいなければ生きていけないような依存体質になってしまった。


 これ以上深刻化する前に手を打つべきだ。綾の今後のために。


 昔思いついた方法を試してみるか……


 俺は心の中で深く覚悟を決めてから綾に告げた。



「……ごめん綾、それは出来ない。実は先日……彼女が出来たんだ。」



 その直後さっきまで幸せそうな雰囲気だった綾の表情から笑顔がスッと消えていく。


「え……」


 綾は呆然と立ち尽くしこちらを凝視する。


「や、やめてよ悠斗……いきなりそんな冗談———」


「いや、本当のことなんだ」


「そんな……はず、ないよ……だって悠斗に誰も手を出さないようにあれだけ手を回したんだよ……? それなのに……」


 綾の声は尻すぼみに小さく、弱々しくなっていく。まるで大切にしていたおもちゃを誰かに取られてしまったかのように。


 正直今すぐにでも嘘と言いって彼女を励ましたい。


 そしていつも通り俺の家で他愛もない会話をしながら笑い合いたい。

 

 ———だがそんな俺の感情で綾の未来を潰すわけにはいかない。


「……ごめん」

 

「…………ねぇ……悠斗……その子どんな子なの?」


「え?」


 次の瞬間、綾が顔をあげると慈愛がこもった優しい瞳が禍々しい闇のような瞳へと変化していた。


「苗字は?名前は?何年?何組?何処に住んでるの?私の知ってる子?身長は?体重は?性格は?容姿は?髪型は?髪の色は?目の色は?胸の大きさは?爪の長さは?告白はどっちからしたの?使ってる化粧品は?着ている服は?好きな本は?その子は今まで何人と付き合ったの?悠斗は何人目?デートには行った?手は繋いだ?キスはした? ……もう二人は愛し合ったの? ねぇ、悠斗教えてよ」


 背中にゾクリと嫌なものが走った。


 ……どうやら俺は綾の依存度をかなり甘く見ていたようだ。


「彼女は他校の生徒だ。名前は言えない。とても礼儀正しくていい子だ。」


 とりあえず聞き取れた分の質問を返す。


 まぁ、本当は存在しない人物なので全て適当に答えるが。


「……まだ愛し合ってはいないの?」


 そこを突っ込んでくるか……


 いると答えた場合刺されそうな雰囲気だぞ……


「ねぇ、どうなの?」


 漆黒の禍々しい瞳を俺の顔に近づけ聞いてくる。


 ……すまん、綾。


「……ああ、既に済んでいる。」


 俺がそういうと更に瞳に闇が増えた気がした。


「そっか……もう何もかも私は奪われたんだ……」


「……ごめんこれからは会う頻度も減っていくと思う。」


「そうだよね……悠斗は優しいから……幼馴染の私より恋人を優先するよね」


「……」


「私、今日は家に帰る……じゃあね、優斗」


「……ああ」


 俺は去っていく幼馴染の背中を見つめる。


 これでよかったんだろうか……こんなやり方じゃなくてももっといいやり方があったんじゃ……いや、これしかなかったんだ。


 恐らく生ぬるいやり方では綾の依存は治らなかった。これが一番最適なやり方だった。


 あとはこれで綾が俺から離れて自立してくれれば成功だ。


 だがやはり幼馴染と別れるのは……寂しいな。


 今まで綾と過ごした日々を思い出す。どれも楽しいものばかりだ。


「……俺も綾のことばかりいえないな。」


 俺も彼女が見えなくなったところで自分の家へと歩き出した。




【あとがき】


最後までお読みいただきありがとうございます!


今回はかなり重いヤンデレ系を書いてみました!


少し重くしすぎたかな? とは思いましたがまぁ、重ければ重いほどいいか! ということでこんな感じで進めていきますのでよろしくお願いします!


面白いと思ったら作品のフォロー、下から出来る⭐︎評価、感想などをいただけるとめちゃくちゃ励みになるので何卒よろしくお願いします!

 



 

 

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