聖剣チソポカリバー ~俺のチソコが最強の剣になった件~
☆えなもん☆
序章
陽が暮れて久しく、街が夜闇に包まれ人々が寝静まる頃。ある部屋で男女が向かい合っていた。
「ずっと、あんたに会いたかった」
「私も、同じ気持ちよ♡」
ベッドがあるだけの一部屋。灯りは点けずとも、窓から入る月明かりにお互いの姿が良く見える。衣擦れの音すら聞こえるほどに静かなこの部屋。まるでこの世界にお互いしかいないのではないか、そう思える程に男女はお互いから視線をそらせずにいた。
「聞いていたより立派ね、あなたの股から伸びるそ・れ♡」
女は男の股から伸びる立派なソレへと目を向けると、恍惚の表情を浮かべた。
「俺もびっくりしたよ。思っていたのとその……あんたの容姿、全然違ったからさ」
男もまた、女の身体へと目を向けた。女性として出るところは出て、それでいて腰は細い。露出が多い服装は、その白い肌をあまり隠せていない。
「なんていうか、その……こんないい女だなんて思ってなかったんだ」
「ふふ、嬉しい♡」
少し湿り気のある髪が露出した背中や胸元といった素肌に張り付いているその姿。目は少し潤んで輝き、顔は赤い。未だに男の股間から生えた立派な剣から目を離さず、それぞれの手を自らの口元や股へ当てる、そんな女の姿や仕草へと、男の股間から生えた立派な剣もまたビクビクと反応を示していた。
「その立派な剣で私はどんな風にされちゃうのかしら♡」
女の言葉と視線に反応させるように、男の股間にある剣はビンビンと動きを見せた。
「こいつは突いて刺すのが得意だ。きっとあんたを満足させられる」
「はぁ……ん♡ 楽しみ♡」
女は何を想像したのか、身を抱くような仕草で身震いをした。
「ね、え……♡ はぁ♡ これ以上言葉が、必要かしら♡」
「そうだな、そろそろ……」
「ええ、これから二人の熱い夜を過ごしましょう♡」
――ここまで聞けば、夜の営み直前の男女でしかない。
しかし……
「殺してあげるわ、勇者♡」
「いい女を刺し殺すのは惜しいが、平和のためだ。倒させてもらうぞ魔王!」
お互い、殺意をこめた瞳で相手を睨む。
これは色々な世界で、幾千と繰り返されてきた勇者と魔王の戦い。その一つ。
この世界にも存在する、勇者と魔王という戦うことが決められた二人。
片や女魔王。頭から黒い双角を生やし、魔力を帯びた赤い瞳と長い髪。理想の女性像を現実に現したかのような美しき魔王。魔力で剣を模り、笑みを浮かべて勇者に斬りかかろうとする悪しき存在。
片や男勇者。いわゆる日本から来た転生者。黒髪黒目の特徴のない青年。股間から聖剣が生えている。
――もう一度言う。股間から聖剣が生えている。
「俺はおまえを倒し、元の世界に帰り、そして俺のチ〇コを元に戻す! 股間の平和のためにこの聖剣チソポカリバーのサビとなれ!」
改めて言おう。これは色々な世界で、幾千と繰り返されてきた勇者と魔王の戦い。その一つ。
その中で、おそらく最も一番ナンバーワンに低俗な物語である――♡
……
「っていうかその最後にハートマークついてそうな喋り方やめてくれない?」
「い・や・だ♡」
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