記念品を集めよう その2

 親父さんの店を出ると山裾の街に飛んだ。まず顔を出したのはテイマーギルド。カレンさんとジェシーさんに挨拶をしてクルミを紹介する。クルミは飽きずに毎回きちんと挨拶というジャンプをしてくれる。


 この街の記念品は街の皮革製品を取り扱っているショップだということを聞いた俺はテイマーギルドを出るとその店に顔を出した。


 ここでは端末用革ケースを購入。色は濃い茶色と紺色、赤色と黄色の4色で、当然全色買いましたよ。1つ1万ベニー。端末にセットして裏側を見ると”Anniversary”と金色の筆記体の刺繍がある。茶色をセットした俺はどうだ!と従魔達に見せた。


「主、お電話が格好よくなったのです」


「ガウガウ」


 リンネとタロウも喜んでくれるし、クルミも二回転ジャンプをしてくれた。リンネによると自分と同じ色なので喜んでいるということだ。


 ショップを出たあと俺たちはくノ一忍具店に顔をだした。お世話になっているヤヨイさんには挨拶しないとね。


「あら、タクじゃない。久しぶりね」


 店の扉を開けて挨拶をすると店の中にいたヤヨイさんが俺を見て言った。


「キャンペーンでしょ?外で魔獣を倒していないの?」


「それは明日からですね。今日は街を回って記念品集めです」


「主は今日はお散歩の日なのです」


「そうなんだ」


 そう言ってから俺の装備に目をやった。


「サツキさんの店で揃えた装備だよね?」


 頷く俺。やっぱり忍の装備を扱っている人は横のつながりがあるんだな。


「それはAGI系よね。STR系も買ったの?」


「買いました」


 そう言うとうんうんと頷いている。


「装備系はきっちり揃えていた方がいいわよ。あとサツキさんのお店に煙玉が売っていたでしょ?高いけど持っていた方がいいわ。絶対に役に立つ場面があるから」


「分かりました」


 確か1個5万ベニー。使い捨てにしてはいい値段しているなと思って見ていただけで、買ってないな。あとで買いに行こう。NPCがこう言う言い方をするのは必ず意味があるからな。


 お礼を言って忍具店を出た俺たち、開拓者の街に移動するかなと思ったが、もう一軒顔を出す店があるのを思い出した。


「こんにちは」


 俺と従魔達が挨拶すると奥からNPCの女性が出てきた。そうそうこんな女性だったよ。


「あら、こんにちは。一度ここで本を買ってくれたプレイヤーさんだよね?」


「そうです」


 一度しか来ていない山裾書店だけど、ちゃんと覚えていてくれたみたいだ。こう言うのが嬉しい。


「キャンペーンであちこちの街で記念品が買えるので回っているんです」


「そうなんだ」


 この本屋さんのNPCはアリーさんと言うそうだ。初めて知ったよ。折角本屋にいるんだから何か本を買おうかと棚を見てみる。本棚にあるのは以前見たのとそう変わっていない。鉱山関係の本が中心で、それ以外には子供用の絵本等だ。俺が本を見ている間、従魔達はおとなしく後ろで座っている。タロウの背中にリンネとクルミが座っているよ。うん、いい子達だ。


「何か買ってくれるのかな?」


「いいのがあれば。お勧めはありますか?」


 アリーさんにお勧めを聞いてみた


「タクは釣りはしているの?」


「やってます。今は海釣りに挑戦中です」


 海釣りね。わかったと、彼女は今自分がいる棚とは別の棚から1冊の本を持ってきてこれなんかどう?と本の表紙を見せてくれた。表紙には『海釣りの基礎』と書いてある。ペラペラとめくってみると中には挿絵があり、竿やルアーの使い方なんかが図入りで説明されていた。チラッと見ただけで今までの自分の釣りのやり方が間違っていたと言うことがわかったよ。リアルで釣りをしない俺には良い教本になる。


「じゃあ、これをください」


「ください。なのです」


 後ろから声がしたぞ。


「毎度あり」


 また来てねという声を聞いて俺たちは店を出た。次は自宅がある開拓者の街だ。自宅に戻りたいところだがまだまだ行くべき場所がある。今日1日で街を回って記念品を手に入れたい。


 開拓者の街のテイマーギルドに顔を出し、そこで記念品を売っている店を聞くと鍛冶屋さんだという。鍛冶屋さんに行くとAnniversaryと書かれたブロンズ製の記念盾だ。1種類しかないが当然買ったよ。値段は8,000ベニーと良心的な価格でした。


 次は試練の街だ。ここのテイマーギルドで挨拶をしてから彼女達に聞いたら記念品は木工製品を売っている店だそうだ。ゲットしたのはこの街のシンボルの試練の塔だ。高さは30センチ程で、木を削って造っている。塔を支えている台にはAnniversaryと書いてある。2万ベニーと言われたけど即買ったよ。もっと高くても売れるんじゃないかな。それくらいよくできているよ。


 木工ギルドを出た俺はモトナリ師匠の店に顔を出した。忍具店は外せない。


「こんにちは」


 店に入ると中に師匠が立っていた。


「うん、いい装備だな。サツキの店のだな」


 聞いたらモトナリ刀匠とサツキさんは兄弟弟子だそうだ。


「装備以外にバンダナ、腕輪も良いものを身につけている。その時に揃えられる最高の装備を身につける。それで初めて攻略が進む、タクはその意味を良くわかっている様だ」


「ありがとうございます」


 モトナリ刀匠に褒められると嬉しいよ。これからも鍛錬するんだぞと声をかけられて店を出た。


「皆主を褒めるのです。当然なのです」


「ガウガウ」


 店を出ると頭の上に乗っているリンネが言い、タロウもそうだと言わんばかりに尻尾を振りながら吠えている。クルミも肩の上で何度もジャンプしているよ。


「褒められるのは嬉しいけど、怒られない様に頑張らないとな」


「大丈夫なのです。タロウとクルミとリンネがいるのです。何も問題ないのです」


「そうか。皆頼むぞ」


 その後森の街、水の街、土の街を訪れて記念品を買った。森の街で手に入れた記念品はやはり木工品だがこっちはいくつもの木を積み重ねてログハウス風になっている建物だ。よくみると水の街のギルドハウスだよ。大きさは40センチX40センチで高さが20センチちょっと。門の入り口の上にAnniversaryと書いてある木の板が貼ってある。これも2万ベニーだったけど安いと思って買った。


 水の街では釣りギルドで記念品をくれた。木彫りの川魚だ。台にAnniversaryと書かれている。これは1万ベニーだった。


 そして土の街、ここでは予想通り窯業ギルドで記念品をもらえた。赤と茶と白のマグカップでAnniversaryと書かれていた。もちろん3つ買ったよ。1つ3,000ベニーだった。これは普段使いできそうなカップだ。


 俺が記念品を買うたびに従魔達も喜んでくれるんだよ。今日は散歩の日ということにしていてあちこちの街を歩いているだけだけど不平も言わずに尻尾を振りながら一緒について来てくれている3体の従魔達。明日からはしっかり外に出るから今日は我慢してくれよな。


 渓谷の街に飛ぶと冒険者ギルドで記念品をくれた。ここでくれたのは絵だ。街の南にある丘の上から渓谷の街を見下ろしたアングルの風景画で、ものすごく綺麗な絵。それが額に入っていて額の右下にAnniversaryと印字されている。これは3万ベニーだった。自宅の洋室に飾ろう。


 山の街の記念品はドワーフの人形だった。それも5体が並んでいる。全員がオーバーオールで髭を生やしているが顔は皆違っている。その5体はそれぞれポーズをとっていて、ツルハシを担いているドワーフや大きな石を持ち上げているドワーフ。鍛治をしているのかトンカチを持っているドワーフ、後の2体は石が入っている台車の前と後ろに立っていて台車を引っ張っている格好だ。ドワーフの表情がどれも豊かで見ていて微笑ましい。もちろん人形を置いている台にはAnniversaryと書いてある。これも3万ベニーだが惜しいと思わないよ。


 俺たちは最後に今まさに攻略している港の街に移動した。テイマーギルドで聞くとこの街で記念品を売ってくれるのは街の港側にある帽子屋さんだ。防具屋でないので戦闘用の帽子じゃないってことだな。


 お店に入ると何人かのプレイヤーがいた。その最後尾に並ぶ俺。従魔達も大人しく一緒に並んでいるが、女性プレイヤーが従魔を見つけてスクショを撮る。相変わらずタロウとリンネは人気者だけど、最近はそこにクルミも入っているみたいだ。


「タロウちゃん大きいね」


「クルミちゃんも可愛い」


「リンネちゃん、スクショ撮ってもいいかな?」


「もちろんなのです。遠慮は無用なのです」


 相変わらずリンネはどこで覚えたんだよという言葉を使うんだよな。遠慮無用なんて俺は言ったことがないぞ。


 俺の順が来るとカウンターの上に黒と白の帽子が2つずつ並んでいる。どちらも男女兼用で1つはベースボールキャップ、もう一つは鍔がついている帽子でどちらも前にAnniversaryと金字で刺繍がされていた。もちろん4つ買ったよ。1つ5,000ベニーだった。店を出ると3体の従魔達を前にして言った。


「これで記念品はコンプした。明日から外にでるぞ」


「やったー!なのです。外で敵をぶったおすのです」

 

 リンネはそう言い、タロウはガウガウと尻尾を振りながら吠える。クルミはその場で何度もジャンプしたよ。うん、やる気満々でよろしい。

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