第7話 地獄には段階がある3
その日は無事に終わり、帰り道のストーカーには素直にトイプチの卵を差し出し、「トイ・ダンジョン公園」で攻略して、大家の文句を聞き流し、宿題を片付けて部屋の中に湧いた「トイ・ダンジョン」を攻略する。
宝石しか出なかったからとても平和だ。成人してギルド……分類的には「トイ・ダンジョン」からの宝を持ち帰る一次産業の会社になる……を設立した時が楽しみだ。宝石の価値は落ちているが、完全に地についている訳じゃないからな。
「……菅池? どうした」
「いっやーそれが……」
「おい待て目を逸らすな。嫌な予感しかしねぇ」
「頼むから大人しく連行されてくれ」
「くっそ、お前のとこの過激派が過剰反応したぐらいしか思いつかないが!?」
「ははっ。正解」
「抑えとけよ対外穏健派! 俺の好みは白状したろ!」
「気にされただけでアウトなんだよ、あいつらにとっちゃ」
「くそっ、これだから過激派は!」
「あ、もしかして一部って?」
「確認しながら腕を掴もうとすんな!」
問題は、放課後だ。菅池賀一(すがちがいち)、昨日俺を問い詰め、ではなく比較的穏便に話を聞いてくれた、ツリ目女子のファン(ガチ勢)が教室の出口で待ち構えていた。
目を逸らしながらも距離を詰めてくる、という不自然さに、どうにか逃げながら聞いてみたら最悪だった。マジかよ。なお菅池本人に気を取られていて、あいつのトイプチが後ろに回り込んで拘束技かけてくるのは読めなかった。
とはいえ小さいから、人間相手だと精々、粘っこい泥の水溜まりを踏んだ程度の効果しかない。のだが。
「ぐえっ!?」
「と、悪い。苦しませるつもりは無くてだな」
「……力づくで、捕獲しようとした時点で、アウトだろが……」
「それはそう。後で俺ら訴えていいぞ。たぶん勝てる」
「……証拠が、ねぇ……」
「まぁなぁ」
こいつ、ちゃんと格闘技やってやがるな……。という感じで良いのが鳩尾に入って、俺はそのまま文字通り連行されていった。どうやら足止めは菅池が担当し、運ぶのは数人がかりのようだ。
流石に途中からは自分で歩き、連れてこられたのは学校近くの、何かの道場だった。え? もしかして俺物理的に袋叩きにされる?
「違う違う。莉緒様のお父様の道場で、子供向けの体を鍛えるメニューもある平和な場所」
「お前の拳クッソ重かったんだが?」
「大丈夫。流石に傷害事件にはしないし、なったら俺達が責任もって警察と弁護士に被害届出すから」
「過激派を潰す口実じゃないだろうな?」
「……。違うぞ?」
「おい待て。今の間は何だ。目を逸らすな。痛いで本当に済むんだろうな?」
と、不安でいっぱいのまま、どうやら休みだったらしい道場に入る。するとそこには、俺より少し年上の男を中心に、5人の男が腕組みをして横に並んでいた。
で、そこに俺が入ると、思いっきり睨みつけてくる。あー、うん。
「我ら、莉緒様親衛隊!」
「莉緒様の御心を守る者!」
「御心を乱す者は悪!」
「悪は拳によって滅ぼすべし!」
……過激派ってヤベェ奴らなんだな。と、俺は心底思った。たぶん過激派っていう実物は「過激派じゃね?」ぐらいの奴が1人だったから、なんかこうもうちょっとマシなんじゃないかと思ってたっていうのも分かった。
うん。ヤベェんだな。過激派って言うのは。まぁここまでヤベェから過激派って呼ばれるんだろうし、どこであろうと過激派っていうのは嫌われるんだろう。真理の1つが分かったかもしれない。
「よって津和克英! 貴様を制裁する!」
「ちなみに何故俺なのか聞いても?」
「いいだろう。貴様が莉緒様の御心を乱したからだ!」
「あ、それ俺じゃないっす」
とはいえこのままだと殴られるまで待ったなしなので、俺はその前に声を上げる。なお止まった訳じゃない。どんどん顔が赤くなっていってるからな。何かのチャージ技か?
「夏毟飛雄。井内蛙綱。大山猿斗。この3人がバカ騒ぎする時にフリー素材的に俺の名前が使われてただけです。俺を殴っても別の奴の名前になるだけです」
「…………ほう?」
あ、良かった。早口で説明したらギリ間に合った。
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