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今日の経営者の恰好は、いくぶん地味だ。でもちょっと派手なマニキュアをしている。
え!?待てよ。左手の薬指に指輪をはめている。
今までなぜ気が付かなかったんだ。
なんか急に意気消沈して、なんて自分はバカなんだと思った。
しぼんだ風船みたいになった。
「今日はこっちに居るのね。」
「はい、気分転換です。」声にはりがでない。
でも、なぜ今まで気が付かなかったんだろう。
おかしいなあ。最初にそこは確認してたはずだ。
そうだ。前回だってしてなかったはずだ。
「指輪なんかしてましたっけ?」
「ああ、これね。気分転換。」と言って指輪をいじって笑っている。
「気分転換?」
「そう。時々嵌めるの。結婚はしてないけど。」
なんだと。急いで風船をふくらます。
「そんな気軽に嵌めるもんなんですか?」
「あんまり気にしてないかも。ここにするの好きだから。」
「彼氏がびっくりするんじゃないですか?」
少し間があく。
「さぐりを入れているの?」と俺を優しくにらむ。
ぎくっ。
なんか見透かされている気分だ。
「まあね。」また声に張りが出ない。
「彼氏は必要ないかなあ。」
この女性は、俺より二枚も三枚も上手(うわて)な気がした。
また風船がしぼんでいく。
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