第24話 金属のさみだれ
橋田に引っ張られ、俺は無事(?)に小洒落たネックレス屋に着いたのだが、俺にはあまり向かない世界のようだ。見ても全く分からん。
「うーん、どれもこれも魔力的すぎる。」
と、言いながら見ているのは察しの通り髑髏のネックレスやよくわからない天使が寄り添っているようなダークネスなやつだ。
お前はこんなんであればどれでも良いのか?
しかし、橋田は意外にもその混沌から目を離し、違うネックレスを吟味し始めた。珍しいな。今回ばかりはガチなのか。それにしても、誰にあげる用のプレゼントなんだ?
そんな事を思っているうちに候補が決まったようだ。
「ねぇ、これとかどう思いますか?」
ジャーンと言わんばかりに広げたもの。そう言って俺に見せたのは黒い月と白い月のペアネックレスだった。
ふむ、確かに悪くないセンスだ。てっきりさっきの混沌に近しいものを見つけたのかと思っていたのだがな。
「だれにあげるのか知らんが、まあ下手な奴よりかはいいんじゃないかな?」
俺がそう言うと橋田は露骨に、ふっふっふっとでも言いそうな表情をした。
「ふっふっふっ」
やっぱりな。
「助手が言うならば間違い無いですね。よし、決めました!!これにします。」
すげぇな。即決とな。もう少し悩んでも良いくらいだと思うが、時間短縮になるなら丁度良い。
ちなみに、さっきチラッと価格を見てみたんだぎ、かんと5千円くらいであった。結構お金持ってるんだな。
駅の改札まで橋田を送り、俺は帰り支度をしていた。結局、橋田は凍える俺に申し訳ないと感じたのかコートを買って来ていた。俺のコートよりも暖かそうだ。
「じゃあ、気をつけて帰れよ」
「ああ、買い物の付き合い感謝するぞ、助手」
「ああ、そんじゃあな」
俺はただその一言だけ言って去ろうとした。
「助手!!」
しかし、そうはいかないようで、その呼びかけに俺は後ろを振り向いた。すると橋田は持っていたネックレスの片割れを俺に投げつけた。
「パース!!」
橋田の掛け声と共にネックレスは宙に舞い、キラキラと光の反射と共に地に落ちてゆく。暫く見惚れていたが俺は正気に戻った。
「うおっ」
俺は急なこの出来事に対して思わずマヌケな声を出してしまった。
そして、右手を出しネックレスをなんとか受け止める事に成功した。一体どうしたと言うのか?そう思い橋田の方を見てみると満面の笑みであった。
「助手よ!!驚いただろ?なにしろ、今日はキサマがブラッドファミリーに加入してから3ヶ月目だ。それは記念品だ。大事にしてれよ!!」
「まさか、プレゼントの相手って.....」
「ふっふっふっ、ではさらばだ!!また会おう!!」
そう言いながら橋田は改札の中へ消えた。俺は何故かそのよく見た背中が、とても立派な物に感じた。
まったく、そう言う事なら先に言ってくれれば良いものを......。やれやれ、不器用なやつだ。
不器用だと言うのは、自分の事を棚に上げている様にも思えるけれど、まあ今はそんな事どうでもいいさ。さて、今日から毎日首に違和感を感じることになりそうだな。このイカしたネックレスのせいでね。
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