組織の宿敵と結婚したらめちゃ甘い
有象利路/電撃文庫・電撃の新文芸
《プロローグ》
『《落とし羽》の反応は近い。回収を急げ、《羽根狩り》』
「──了解」
《羽根狩り》と
ヘッドライトとネオンの輝く雑多な街の
「こちら《羽根狩り》。《落とし羽》を発見した」
『至急回収し、帰投しろ。周囲に敵影はない』
どこかの大型ビルのヘリポートで、それは不自然に存在していた。
大型の鳥類から抜け落ちた黒い風切り羽。見た目だけならば素直にそう
屋上は全面消灯されており、月光以外の光源はなく、
多少知恵の回る者ならば、この羽根が異様なモノであることをすぐに察する。この世に在りながら、しかしどこか全てを隔絶したかのような、ただ羽根の形を取っているだけの何か。
《羽根狩り》の役目は、文字通りこの羽根──《
静かに、《羽根狩り》はそれへと近付く。ごうごうと耳に煩わしい風の音が、どういうわけか羽根へ近付くほどに消え去ってゆく。音が、この羽根に吸い込まれているのか。
手を伸ばしたその時──
「ッ!」
瞬間的に
同時、数瞬前まで《羽根狩り》が在った地点に、幾つもの刃が突き刺さる。刃は月光を受けて
殺気を針と称するならば、《羽根狩り》の全身は今まさに滅多刺しとなっている。この
「敵影はない、か。冗談のつもりだったのか?」
『……訂正しよう。たった今こちらも捕捉した。《
「ああ。いつものだ──通信を切る」
インカムの電源を落とす《羽根狩り》だが、目線だけは一箇所に固定している。
長い銀髪が、荒れる風で意思を持ったかのように
ビルの
自分達《
「《羽根狩り》──……ここで退くのなら、見逃してあげる」
涼やかな声音だった。それもそうだろう、《
そして、《羽根狩り》と《
「それでおれが退くと思うのなら、知能が皆無に等しいな」
「格下相手に情けを掛けてあげていることに気付かないの?」
面罵し合うのは、別段
しかし、格下と見られたことに《羽根狩り》は内心少し
事実ではある。《
およそ真正面からやり合って勝てる相手ではないが、《羽根狩り》は口角を
「あまりの温情に涙が出そうだ。《
「……《機関》のその呼び方、好きじゃない。わたし達は《
「意味は同じ──だッ」
《
狙い
(
《
「相変わらず、対話の出来ない人ね。まあ、構わないけれど」
彼女の腰に提げられている得物は、日本刀。銃を持つ《羽根狩り》とは対照的だった。
「どうせ、最後に立っている方が《落とし羽》を手にするだけだから──」
地を蹴り、宙に舞う《
天より雨粒が一滴落ちるかの
──異能力、《
《
他方、《
「……! 腕の一本ぐらいは持っていけたと思ったのに」
《
「一発ぐらいは当たれ、畜生」
《羽根狩り》は
共通する特徴ではなく認識として、《
故にこそ、《羽根狩り》とは──《落とし羽》を拾い集める
「あなたが現れる度に、わたしも出なくちゃならないのって、本当に面倒」
「同感だ。お前が動けば、都度おれも出張ることになる。嫌気が差す
単独で《痣持ち》を撃破可能な無能力者。
《
《
《羽根狩り》を止められるのもまた、《
「じゃあ素直に斬られてくれる? そうすれば二度と会わなくて済むから」
「二度同じことを言わせるなよ。それでおれが斬られると思うか、間抜け」
両者は同時に距離を取る。単純な力量差は《
ただ一つ、はっきりしているのは──
「……大っ嫌い!」
「奇遇だな。おれもだ」
──二人の
そしてこの《落とし羽》を巡る闘争が在る限り、
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