第5話

 地獄に空気になってしまったが……気を取り直して、四人で青春というものを考えてみる。


 しかし、ふと思ったが妹が高校生なのでドンピシャで青春真っ盛りの時だ。


 そうだ、妹に聞いてみるかな? 


 私は、スマホを取り出して、3人には内緒できらりに『急だけど、きらりって普段何してる?』と質問してみた。


 そうしたら、すぐに既読がついて返事が返ってくる。


『おねぇの事見てるよ?』


 と、帰ってきた。


 いや、そうじゃない。


 私が聞きたいのは、普段、普通の高校生がどんな事をしているかだ。


 それとなく、質問を変えてメッセージを送ってみる。


 すると、またすぐに返ってきた。


『おねぇの事見てるよ?』


 バグった??? 


 私のメッセージアプリがおかしくなったのか、妹からの返事が同じ返事しか返ってこない。


 試しに、らきすととも友達になっているので、当たり障りもない事を送ってみる。


『愛してるぜ』

『きも』


 目の前のらきすとがうげぇって顔しながら返してきたので、どうやら問題ないらしい。


 ふむ、ともなれば、きらりは四六時中私のこと見てるのか……。


「……まずいな……」


「え? 何がまずいんですか?」


 まなみが両手で現役アイドルらしく、両手でカップを持ちながら私に聞いてきた。


「いや、考えれば、考えるほど青春って言葉にドツボにハマりそうでな」


「嘘でーす、この女僕にこんなメッセージ送ってきて、反応楽しんでましたー。変態でーす」


「うおおおおおい! 待って!?!?」


「愛してる……ってなんと! マイセンさん!」


「きゃあああ!! まさか!? まさかですか!?」


 急に騒ぎ始める百合厨共。


 変な餌を与えてしまい、両手をあげて喜ばれた。


 しかも暴露した当人はしたり顔で、こっちを見てくる。


 やめろ〜〜〜、勘弁してくれ〜〜〜。


「違うから! そういうアレじゃないから! なんかメッセージアプリがおかしくなったのかなって適当に送っただけだから!」


「ふーん、それなら良いんだけど〜?」


 らきすとがニヤニヤしながら携帯をフリフリする。


 なんだそのしてやったり! みたいな感じ! 


 私がまなみと近づいてイチャコラしてたのを根に持ってやがるな!? 


 よーし! だったらこうしてやる! 


 私はまなみの肩に手を置き、そのまま、らきすとにくっつける。


 すると、状況を理解できなかったらきすとは、徐々に顔を赤くし始め、ガタガタと震え出した。


 まなみの方は急ではあったが、元から友達とイチャイチャするのが夢だったので、頭にハテナマークを浮かべてそうな顔をしながら笑顔でギュッと抱きつく。


「え???? は???? 終わった」


 急な情報量過多に頭がパンクしたそうで、らきすとはその場で固まりつつ、しっかりとまなみの匂いを堪能し始めた。


 変態め。


 よし、これでうるさい奴は黙ったので良しとしよう。


「あはは……しかし、我々が学校に入り直す訳もいきませんし、どうにか手頃かつ、長く続けられそうな趣味など見つけれれば良いのですが……」


 ラークが苦笑しながら、話を戻してくれた。


 さすが最年長。


 しかし、手頃かつ……長く続けられそうな趣味か……。


 確かにみんなで楽しめる趣味なんか見つけれれば、それをやりながら、青春って奴を探すのもありなのかもしれない。


 ……ん? そういや、全員の共通の趣味って二次創作……つまり同人誌を見たり作ったりすることだよな? 


 ……おお! それがあるじゃん! 


「……まなみ、お前、同人誌、興味ある?」


 私は早速、らきすとの胸の感触を堪能しているまなみに話しかける。


「へ? は、はい……! でも私、まだ未成年なので買ったことはありません」


 どんな同人誌を想像してるんだよ。


 まなみが言った奴は、成人向け、つまりエッチな薄い本のことだ。


 まあ、それに興味を持つのも仕方ないし、だって百合のエッチな薄い本は何冊あっても良いからな! 


 それと、未成年なのでと、平気な顔で言ったまなみの胆力には恐れ入った。


 普通、赤面物だろ。


 っと、違う違う。


「まあ、それもあるけど、私が言ってるのは、私たちがいつも書いてる、普通の二次創作だ。推しカプがただイチャイチャするだけでも良し! 何かストーリーを持たせて書くもよし! なんならわんかに! 以外のジャンルでも書いてよし! どうだ? まなみ、私たちと一緒に同人誌書いてみない?」


「で、でも……私……、これまで小説とか漫画とか書いたこと……」


「良いんだよ! 誰だって最初は、手探りで始めたんだ! 私なんて最初投稿する時、誤字脱字が酷いし、文章なんて碌に書けてなかったんだぜ!」


「……!」


「それに、私たちと青春するんだろ? やってみたかったこと、作品で表してみたらどうだ? なんなら、そのまま現実でやってしまうのもアリだよな!」


 まなみはらきすとから離れつつ、顔を輝かせて胸でギュッと手を握る。


 らきすとも、まなみを見ながらウンウンと頷いている。


「それに、ここには人生の先輩が3人もいるんだぜ! なんでも試して、やってみよう! なっ?」


「……! は、はい! 私……! 何か書いてみたいです!」


 よーし! そうと決まれば、私はいそいそとスマホを取り出して、直近の同人誌即売会を調べる。


 ふむふむ、なるほど、どうやら4ヶ月後にわんかに! のオンリーイベントを開催するみたいだ。


 オンリーイベントとは特定のジャンルや作品、キャラクターに絞って開催されるイベントの事だ。


 わんかに! は大きなタイトルなので、会場を貸し切って、わんかに! だけの大きなイベントにするらしい。


 主催者も豪胆な事するなぁ。


「どうやら4ヶ月後に、わんかに! オンリーイベがあるみたいだな! よし! なら、まなみ! まずは何が書きたいか、お姉さんやおじさんに相談してみろ!」


「はい!」


 まずは参加する前に、何を書きたいか目標を決める! 


 世の中には衝動で参加した後に、何書くか決めるヤバい(褒め言葉)奴らも居るが、一応私も初参加だし慎重に行こう。


「ふふ、良いですね……! それに私も見る専門ですが、多少お手伝いできますよ」


「お! ラーク、マジで!? 何ができるの!?」


「ええ、こう見えても私は顔が広いので、本を刷る印刷所を見繕えます、おそらくネットで探すよりか安くできますよ……!」


 おお! それはありがたい! 


 結構印刷費って馬鹿にならないからなぁ。


 安いとこも探せばあるが、ピンキリではある。


 最初はコピ本って手もあるけど、やっぱり製本した時の感動って何にも変えられないからな! 


 かく言う私も、一回だけ自分の本を作ってみたことがある。


 人には出さずに自分で保管するようだったから一冊だけだけど、渾身の作品が本になる感動はかなり大きかった。


 おお! いいんじゃないか? 思いつきで提案したが、結構楽しそうだ! 


「それに、書道家なので添削には自信がありますよ? 誤字脱字などは見逃しません」


「へぇ、ラークって書道やってんだ。通りで指にタコが出来てると思ったよ」


「……! マイセンさんって目がよろしいんですね。ええ、昔から続けている、唯一の生業ですよ」


「かっこいいな!」


「……!」


 ラークは一瞬ビックリしたような表情をした後、笑顔を向ける。


 いや〜イケおじの笑顔って結構眩しいな。


 そんじょそこらのイケメンに負けてない。


「よーし! らきすと! イラストよろしく!」


「え!? 僕も参加するの!?」


「当たり前だろ、何言ってんだ? まなみが覚悟決めたんだぜ〜? 大人が日和ってどうするよ〜?」


「……分かった……まなみちゃんの本だし、手は抜けない……! とびっきり可愛いの描いてやる!」


 よし、らきすとの方もやる気だな。


 イラストって結構手間かかるしな。


 後でイラストの依頼料を盛大に押し付けといてやろう。


「さぁって、まなみ! アイドル業と兼任で本作りだ! 結構、時間はないけど、良い物一緒に作ろうぜ!」


「……! はい! ご指導お願いしますね! 芒さん!」


 まなみの笑顔が眩しい。


 なんか思ってた青春とは違うけど、これで一歩でもまなみの理想に近づけたかな? 


 さて……あとはまなみがどんなジャンルを書きたいかだ……! 


 イチャイチャするのが夢だって言ってたから、わんかに! キャラの推しカプの甘酸っぱい話でも書くのかな? 


 うーん楽しみ! 


「さて、どんな話にする? 詰めていこうぜ!」


「はい! 私、ずっと見たかった話があって……!」





「あかりちゃんとしずくちゃんの監禁ドロドロ束縛百合がみたいです!」


「「「待って」」」





 どうなる!? 私たちの同人誌作り!? 

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