花村咲は背が小さく小柄で、長くて綺麗な黒髪をしていて、明るい元気な性格で、(なおかつ)美人で、表情が豊かで、クラスでもとても人気のある生徒だった。

 宮森実は、背は高くて、顔はまあまあだったけど、性格は明るいと言うこともなく、友達もあまりいなくて、クラスで人気があるということはなかった。

 咲は日向に咲く花であり、実は陰日向に咲く花のようなものだった。

 花村咲は自分の机の上に落ちた桜の花びらを手に取って、それを珍しいものでも眺めるかのようにして、そっと目を細めて眺めていた。

 実はそんな咲の横顔をじっと見つめていた。

「桜。そろそろ散っちゃうね」窓の外を見ながら咲が言った。

「そうかも知れないな」同じように窓の外に咲く桜並木の風景を眺めながら、実は言った。

「じゃあ、そろそろ本題ね」

 咲は実を見て言った。

「ああ。いつでもどうぞ」となんの根拠もない自信を持って、宮森実は花村咲を見てそう言った。

「まずその人はすごく鈍感なの。本当にすごく。私のこの恋心に一年間も気がつかないくらい」と一本だけ人差し指を立てて咲は実にそう言った。

「一年間も? それは確かに鈍感だな」

 一年間。花村の近くにいたってことなのかな? すると(自分に相談することを考えても)やっぱり花村の好きなやつはこの高校の、それもきっと一年のときに花村と同じ教室だったやつなのかな? とそんなことを実は思った。

「でしょ? この私の片思いの気持ちに気がつかないなんてありえないと思わない?」花村は言った。

「思う。すごく思う」うんうんと頷いて実は言った。それは実の本心だった。(美人の花村の片思いなんて、そいつはなんて羨ましいやつなのだと思った)

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