ロスト・ワールド〜少年・少女の頃に過ごした地球は消え去り、いつの間にか別の地球で過ごしていた話〜

轟 朝陽

第1話 東京タワー 〜 後藤耕一 、その1〜

 後藤耕一は中学校の修学旅行で東京に来ていた。

 九州の田舎で過ごす耕一にとって、テレビの映像でしか見たことがない大都会に訪れ、見る物全てが別次元に感じられた。

 修学旅行の二日目に訪れたのは東京タワーだった。

 観光バスから降り、空を見上げる。

 そこには、333メートルの高さを誇る東京タワーがそびえ立っていた。

 真っ赤に一色で塗られたタワーは、遠くから眺めても直ぐにその姿を捉えることができるだろう。

 修学旅行ではお決まりの集合写真を、東京タワーの前で撮影した。

 耕一は家族へのお土産に、東京タワーの模型を買って帰ることにした。


 修学旅行を終え家に戻った耕一は、家族に東京のみあげ話を聞かせた。

 特に東京タワーのことについては熱弁をふるった。

 お土産に買ってきた東京タワーの模型はテレビの上に置き、いつでも目につくようにした。

 東京タワーでの集合写真は、東京タワーの足元だけが写っていることに笑えた。これでは、どこで写真をとったのか直ぐには分からない。


 あれから30年後、耕一はとあるセミナーに参加するために東京を訪れた。

 セミナーを明日に控え、今日は時間を持て余していた。

 中学の修学旅行で行った東京タワーにでも行ってみるかと思い立ち、羽田空港から電車を乗り継ぎ東京タワーへと向かった。

 30年経過した東京タワーはあの時と変わらずその場にそびえ立っていた。

 その姿を見た耕一は何か違和感を感じた。

 中学の修学旅行で見た東京タワーと何か違っているようだが・・・

 違和感を覚えつつもそれが何であるかは分からなかった。

 とりあえず来た記念にと、スマホで東京タワーをバックに写真を撮った。

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