第17話 乾いた大地が潤う時
☆
私の地面はひび割れている。
地面がひび割れている為。
いつ壊れてもおかしくはない。
転落してあっという間に死に至る。
頭を打ち付けて出血して死ぬ。
そう思っていた。
私は愚かな真似をしてそのひび割れを無理矢理修復していた。
つまり乾いた大地を瞬間接着剤だけで補修する様な。
そんな感情だった。
だからいつか解ける。
そう思っていた。
だが...私は坂本美里。
そして隆一に出会って全てが変わり始めた。
私は...何をしているのか分からなかった様な感じで愚かな感じだった事に段々と気が付いてきた。
全てが絶望的だった。
その中から彼や彼女達は私を救ってくれた。
私は...頭がおかしかったが。
それがまともに戻りつつある。
「...」
私は飲み物を準備する。
そして考えていた。
私はこれで良いのだろうか、という感じでだ。
するとインターフォンが鳴った。
「はい」
『来たぞ』
「...今開ける」
それから私はドアを開ける。
するとそこに少しだけ複雑な顔の隆一と。
笑みを浮かべた坂本美里が居た。
私は「...」と考えながら「入って」と言う。
「...ああ。じゃあお邪魔する」
「うん」
「...」
そして私は部屋に招き入れる。
坂本美里は「...遠島」と言ってくる。
私は「何」と返事をする。
すると坂本美里は「これ」と何かを差し出して来る。
「...何?これは」
「お菓子。...訪問するから」
「...そんなの...良いのに。私にあまり...」
「一応、他の家に訪問するんだから。...ね」
「そう。じゃあ...受け取っておく」
私は受け取りながら2人を見る。
「椅子に座って」と促した。
坂本美里達はそのまま椅子に腰掛ける。
すると「なあ」と今度は隆一が聞いてきた。
「坂本美優に関して...お前はどういうのを知っているんだ」
「...私?...私は...あの子の素性を知っている」
「素性って何?遠島」
「...彼女は泣きべそをよくかいていた。彼女は...弱かった」
「...え?そんなの...私の前じゃ一度も」
「怖いって言っていた。ガンが」
そう答えながら私は紅茶を淹れる。
そして2人の前に持って行く。
すると坂本美里は「何かまだ知っている事ある?」と聞いてくる。
私は「...彼女はロケットペンダントを持っていたと思う」と言う。
「「これはもし私が死んだら...妹にやるんだ」って言っていた気がする」
「...」
涙を浮かべる坂本美里。
私はその姿を見ながら「...」となる。
それから坂本美里は胸からロケットペンダントを取り出す。
それは一部が焦げていた。
焼死体が見つかった時の...か。
「...そんな形のペンダントだった。貴方が持っているとは思わなかった」
「そうだね。...そういう情報が聞けるかなって思って今日来たのもある」
「...そう。...それで来たのね」
「そう」
私はそのロケットペンダントを触らせてもらった。
確かにこれはあの子のだ。
坂本美優の物だろう。
私は紅茶を前に差し出しながらケーキを出した。
「...私は...ほとんどあの子に関わって無い。だけど彼女の弱さ。強さを知っている」
「...そうなのか」
「そうだね。...だから私は可能な限り貴方達に教える」
そう言いながら居ると隆一が「その前にお前に知らせておきたい」と切り出した。
何を知らせるのだ?、と思っていると隆一は「実はお前のいじめの事を学校に訴えた」と切り出してくる。
私は見開いてから「!」となる。
「...待って。何でそれ」
「...お前のその事は見過ごせない」
「だけど待って。隆一。私はこれを天罰だと思っている」
「天罰にしては重過ぎる」
そして隆一は眉を顰めた。
それから前を見る。
私は目線をずらしていると坂本美里が「さーくんが気になっている事だから」と切り出した。
「私はさーくんのやる事を応援する」
「しかし私はそれを望んでない...」
「それは本当か?...お前の本心とは思えない」
「...私にはそんな資格は無い」
「...そう言う資格はあると思う」
私はそんな言葉に隆一を見た。
隆一は「嫌なら嫌とはっきり言え。...嫌な状況は変わらない。じゃないと」と言いながら私を見てくる。
私はその言葉に「...」となる。
それからケーキを食べる。
「...隆一。私はそんなに良い人じゃ無い。貴方を裏切ってもいるから。...そこまでする義理は無い」
「義理は無いな。だけど俺は...お前の為じゃない。やりたいからやっているだけだ。気に入らないからやっているだけだ」
「...訳が分からないね。君は本当に」
視界が歪んだ。
そして水に沈んだ様な世界が現れる。
私は涙を浮かべていた。
それから顔を覆う。
「遠島」
「...うん」
「私は貴方のやった事は許せない」
「...うん」
「だけど貴方がそうなった原因が原因。だから私は...貴方のリスタートを応援する」
私は涙を拭う。
袖で拭ってから「そう」と返事をした。
それから私はまた隆一を見る。
隆一は私を見ながら肩を竦めた。
「...私は愚かだった」
「...ああ」
「そんな愚かな私に貴方達は迷う事なく手を差し伸べた」
「...」
「私は頑張る」
そう答えながら私は涙を拭った。
それから2人を見る。
2人は私を見ながら柔和にまたなった。
そして笑みを浮かべる。
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