第15話 坂本美優と遠島恵理子
☆
私は授業を受けてからそのまま用事があると出て行ったさーくんに会う為に...と思って教室を出た時。
目の前に遠島が立って居た。
別クラスでしかも離れた場所に教室がある。
それなのにこうして会いに来る。
つまり私か。
それか...さーくんに用事か。
「...貴方に会いに来た」
「...何の用事?」
「以前、貴方に殺人の事を言った事を謝りたいと思って。全てが浅はかだった。...私が悪かった」
「!」
「...私は貴方達とは距離を取りたい。...だけど謝る必要性のある事、必要な事は全てやっておきたい」
そう言いながら遠島は頭を下げた。
私はその姿を見ながら顎に手を添える。
そうしていると教室の奥から「遠島」と声がした。
その声の主は東芝君だった。
「...お前のやった事は打ち消せない。だけどお前がそうして謝りに来たって事は相当な覚悟の上だろ?」
「...そう」
「アイツは相当傷付いたから。お前が少しだけでも反省するその姿をアイツにも見せてやれよ」
「...そうだね」
そして遠島は私に頭を下げてからまた去って行こうとした。
その背中に「遠島」と声を掛ける。
それから私は考えながら「アンタの事。知ってる」と言う。
その言葉に遠島が足を止めた。
「...知っているってのは」
「アンタ私のお姉ちゃんの友人だったんでしょ」
「...相当前の話。...今は関係無いから」
「アンタ...小児がんを治したんだよね。病棟で友人だったんでしょ。お姉ちゃんと」
「...確かに」
それから遠島は足をまた動かした。
去って行こうとする。
その肩を掴んだ。
そして「待ちなさい。...何でそんな大切な事を黙っていたの」と聞いてみる。
すると遠島は「...必要が無かったから。表に出す為に」と答えた。
「あの頃はお母さんもお父さんもまともだったんだけど...まあそれは良いけど。...私は...貴方のお姉さんに嫉妬していた」
「...嫉妬って何?何を嫉妬していたの」
「才能の嫉妬」
「...!」
「だから妬んでいたのもあるから」
「だけどだからと言って表に出して良い訳が無い。私はやり過ぎた」と遠島は言う。
それから「じゃあ」と去って行く。
その光景を見ていた春香と東芝君がやって来る。
「そんな過去があったんだな」と言いながら、だ。
私は「お母さんに聞いたけど。...遠島に似ていたから」と答える。
「...それで遠島に聞いた」
「そんなもん喋りそうにないもんな」
「...そうだね」
「うーん。遠島の件は結構謎が深まるねぇ」
「そうだねぇ。春香」
私達は遠島が去って行った方角を見る。
そして教室に戻った。
私は遠島の事をまた考えた。
☆
私は短い期間で脳腫瘍だった事がある。
だけど早期に発見されて脳腫瘍は放射線治療により抹消できた。
その間の入院期間で知り合った少女が居る。
彼女の名前は坂本美優という。
優秀で可愛くて...愛らしい子だった。
と同時に私は嫉妬していた。
何故なら折り鶴も作るのが上手だし。
私は下手糞だった。
そこら辺であくまで才能の差があった。
記憶力が半端じゃなかった。
私は坂本美優を恨んでいた。
だけど逆に私は坂本美優と知り合いで居たかった。
ごちゃまぜであった為。
私は...自分自身を呪っていた。
それが今の結果だ。
私は坂本美優が焼け死んだ事を知り。
そのまま坂本美里に詰め寄った。
私は怒りを坂本美里にぶつけていただけかもしれない。
最悪の状態だった。
いずれにせよ。
私が坂本美里を貶したのは事実。
だからこそ私は。
私は。
反省をしなくてはならないだろう。
どうあれ私は人を貶した。
頭がおかしかったとはいえ私は...反省をしなくてはならない。
「...」
私はシャーペンを見てノートを見る。
それから書いていると消しカスが飛んできた。
そしてゴミが飛んでくる。
授業中だというのに。
そこには死ねと書かれている。
「...」
まあ当然の結果だとは思ったけど。
まさか別学校にこんなに噂が侵食しているとはそれは思わなかった。
そう考えながら私は授業を受ける。
そして休み時間になった時。
私に女子が絡んで来た。
☆
「アンタ売り女でしょ?何か売春行為もしていたんでしょ?めっちゃ汚いね」
「...」
こうなるとは思っては居た。
だけど速度が速すぎる気はする。
そう思いながら女子トイレで絡んで来る連中を見る。
鬱陶しい。
「私、性病が移るからアンタと一緒嫌なんだけど」
「私は性病じゃないから大丈夫ですが」
「あ?何か言った?」
面倒臭い連中だ。
そう考えながら居ると女子トイレのドアが開いた。
そしてそこに男子生徒が居た。
それは...隆一だった。
「ここ女子トイレなんだけど。隆一」
「そんな事を言っている場合かお前は。女子に連れられて行ったって聞いたから来たんだぞ。しらみつぶしに当たってな」
「...」
そして私の手を握ってから連れて行こうとする。
私は「待って。私は」と言いながら居ると。
女子生徒が「待って待って。そいつは病原菌だよ?」と笑いながら言う。
その言葉を無視してから私を連れ出す。
「何をしているの。隆一。貴方も酷い目に遭うよ」
「それは確かにな。自分でも何をしているか分からん」
「じゃあ来なかったら良いんだけど」
「それは出来ない」
「そもそもこんな状況の女子を見て見ぬふりなんぞ出来るか」と隆一は言う。
そして屋上までやって来てから「...お前の事。全て聞いた」と話してくる。
私は眉を顰めながら「?」となる。
「お前は...坂本美優と知り合いだったんだな」
「おおよそ1か月だけ。...でもそれじゃ何のカウントにもならないでしょ」
「何故それを黙っていた」
「...言う必要が無かった」
そして私は手すりを持つ。
それから「でもどっちにせよ私を助けてくれて有難う」と隆一を見る。
隆一は真剣な眼差しのまま世界を見た。
再び私に向く。
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