第65話 風に乗る手紙

恵美は学校の友達から、風船郵便のプロジェクトに誘われました。このプロジェクトでは、参加者が手紙を書いて風船に結びつけ、風に任せてどこか遠くに送り出すというものでした。恵美はこのユニークなアイディアに興奮し、すぐに参加を決めました。


彼女が書いた手紙は、未来の自分へ宛てたものでした。恵美は手紙の中で、自分の夢や希望、今感じていること、そしてこれから学びたいことを綴りました。それを丁寧に折りたたみ、防水加工を施した封筒に入れて、大きなヘリウム風船に結びつけました。


プロジェクトの日、恵美とその友達は地元の公園に集まりました。他の参加者もそれぞれユニークな手紙を風船に結び付けており、空は色とりどりの風船でいっぱいになりました。リーダーの合図で、みんなが一斉に風船を手放しました。風船はゆっくりと上昇し、やがて見えなくなるほど遠くへと飛んでいきました。


恵美はその光景を見ながら、自分の手紙がどこへ旅するのか、そして誰かに見つけられるのかを想像しました。彼女は手紙に自分の連絡先を書いており、もし誰かがそれを見つけて返信してくれたら、と考えるだけでワクワクしました。


数ヶ月後、恵美の家に意外な郵便が届きました。それは彼女の風船郵便が見つかったという返信でした。手紙を拾ったのは、遠く離れた町に住む老夫婦で、彼らは恵美の手紙に感動し、自分たちの人生経験と応援のメッセージを書いて返してくれました。恵美はこの思いがけない出来事に大変感動し、すぐにその夫婦にお礼の手紙を書きました。


この経験から、恵美はメッセージが持つ力と、未知との素晴らしいつながりを実感しました。その夜、彼女は日記にこの一連の出来事を記録し、「風に乗った小さな手紙が、予想もしない素晴らしい交流を生むことができるんだ」と感謝の気持ちを綴りました。このプロジェクトは単なる楽しい活動ではなく、人と人とを繋ぐ架け橋となったのです。

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